古いアルバムの写真、友人にもらう子どもの写真……紙焼き写真の整理は面倒だが、iPhoneで簡単・キレイに取り込める「Omoidori」が人気だ。スキャナで定評があるPFUが“スマートフォンの周辺機器”としてこの商品を出した理由とは。【記事最終ページに商品企画書を掲載】

古いアルバムに貼られた写真を保存しようとしてデジカメやスマホで撮影してみたが、保護フィルムが反射して上手く撮ることができない。そんな経験をした人は少なくないだろう。フィルムを剥がそうとすると写真やアルバムを傷つけてしまうし、アルバムに貼られていなくても、反射や自分の影が入り込んで、なかなか上手くいかないもの。

そんな悩みを解決するiPhoneアルバムスキャナ「Omoidori(おもいどり)」が人気だ。2016年6月24日に発売された直後は品切れ状態が続き、半年で1万台を出荷した。

■「Omoidori(おもいどり)」の気になるポイント
・アルバムの古い写真や、子どもの紙焼き写真を簡単&きれいにデジタル化できる。
・スキャナやパソコンを使うのは面倒、難しいという人でも、iPhoneさえあれば簡単に使える
・結婚式や「終活」にも活用できる。
・商品開発チームは4人、専属担当は女性社員2人のみ。
・東日本大震災と開発者個人の想いが、これまでなかった商品を生んだ。

使い方は簡単。「Omoidori」に手持ちのiPhoneをセットし(iPhone 7、6s、6、SE、5s、5に対応)、写真の上に置いてスキャンする。スキャンされた画像はアプリを通じて、iPhoneのカメラロールに保存される。これだけでアルバムの写真がきれいにスキャンできる。操作が簡単なので、デジタル機器に慣れていない高齢者でも手軽に使用できるのがポイント。購入者は40代、50代が全体の60%を占める一方、60代以上の購入者が14%に上る。

転機になったのは、東日本大震災だった

「Omoidori」の開発がスタートしたのは今から遡ること10年前。発売元であるPFU(本社・石川県かほく市)の役員が、「アルバムの写真をテカらずに取り込めるスキャナが欲しい」と声を上げたことが始まりだった。さっそく同社の先行技術開発部門が取りかかったが、作業は非常に難航した。

写真を撮るには光が必要だが、光があるとどうしてもアルバムの保護フィルムが反射してしまう。ケースで写真を覆ってみたが、今度は光量が足りずに写真が真っ暗になる。この物理的な壁がどうしても突破できなかった。開発がスタートしてから5年の月日が経ち、誰もが諦めかけていた頃、大きな転機が訪れる。東日本大震災だ。

「テレビで瓦礫の中に写真が散らばっている様子や、被災者の方たちがアルバムを拾い集めている姿を見た役員は、『このスキャナはどうしても商品化しなければいけない。採算度外視でもいい。これは会社としての使命だ』と思ったそうです」

こう話すのは、「Omoidori」の商品化を行ったPFUの国内営業統括部パーソナルビジネス営業部の佐藤菜摘さん。下に掲載している動画に登場する、ショートカットの若い女性が佐藤さんだ。先行技術開発部門のメンバーたちも被災地の映像を見て、「思い出はいつかなくなるもの。このスキャナを実現しなければいけない」と強く感じたという。諦めムードだった社内に火がつき、開発に本腰が入った。しかし、技術的な困難は依然として立ちはだかっていた。