2010年に創業し、14年にはスマートフォンの世界シェアでサムスン、アップルに次いで3位になった中国のシャオミ(Xiaomi)。また、03年の創業から5年後に、電気自動車の開発・販売に成功したアメリカのテスラ・モーターズ。両社のように近年、創業初期から世界中の取引先と手を組み、世界中の顧客に商品やサービスを提供して急成長する新たな組織形態「ボーングローバル企業」が登場しています。一体なぜでしょうか。
世界規模の事業を行うには、かつては大企業のほうが有利でした。しかし00年前後を境に、それが中小企業でもできるような経営環境の変化が起きたのです。
経済学者オリバー・ウィリアムソンの1971年の論文によれば、不完全市場では、取引相手を探し出すコスト、探し出した取引相手と交渉し契約を行うコスト、契約内容が守られたかを管理するコストが存在します。20世紀には、市場で取引するよりも、その取引を組織内で囲い込んだほうが、これらのコストを下げることができました。例えば、大阪でモノを買い、それを運送会社と交渉して東京へ運ぶよりも、組織内に運送機能を持って運んだほうが、総体的な費用を節減できるということです。そのため、企業はさまざまな取引を組織内で囲い込み、大きな組織をつくり上げてきました。
ところが現在では、取引相手の探索、契約、管理のいずれのコストも大幅に低下し、取引を組織内で囲い込む必要性が低くなりました。コストが下がった要因は、(1)インターネットなどによる情報通信・メディアの発展、(2)人・モノの移動手段の進化、(3)ISOなどの国際標準に代表される人工言語の整備、(4)国家間の通商協定など、国際協調の進展です。これらに国際的なアウトソーシングサービスの成長が重なり、小さな企業でも、世界中の市場に存在する資源を調達し、世界規模で事業を行えるようになったのです。