Twitterにとってオリンピックはいつもチャンス

――日本市場だけに絞れば、確かにユーザー数が増加していますから、主な収入源である広告は伸びるでしょうね。しかし、今後の成長余力に関してどう見ていますか?

【笹本】日本という地域で考えると、2020年の東京オリンピックが大きなイベントとしてあります。過去をふり返ってもTwitterはオリンピックとのシナジーで成長した面がありました。日本の事業は5年前の法人設立以降、順調に成長してきましたが、今後はさらに伸びていくでしょう。MAUが4000万まで増加したと先日発表しましたが、実は1年前が3500万、5年前が600万でした。グローバルでの成長も止まっていませんが、日本はその中でもトップの成長率です。

――本社との距離が短縮されたことや日本市場の成長は、グローバル組織の中での発言力という面で大きいと思いますが、日本のユーザーにとってプラスになっている側面はあるのでしょうか?

【笹本】利用動向を分析してみると、日本のTwitterユーザーはとても特徴的な使い方をしています。とりわけ多いのがツイート検索機能、たとえば電車の遅延情報などです。電車の路線名で検索すると、同じ路線を使う他ユーザーの様子が見えてきます。Web検索との違いは時間軸(があること)で、まさに“今起きていること”が検索から見えてくる。 実際、ニールセンの調査によると、日本の若年層(10~20代)はGoogleよりTwitterを検索する回数の方が多いんですよ。検索キーワードの動向も、Twitterのリアルタイム性もあってか、個人の興味・関心や、喜怒哀楽の感情に直結する要素が強いんです。

 

Twitter。140字の短文、写真、動画を投稿できる
――このあたりは都市の人口密度が高く電車通勤・通学者が多い日本特有の環境もありそうです。他にも「地震が起きたらTwitterを見る」という人は多いですが、これも日本らしい使い方ですよね。おっしゃるような利用動向がユーザーを増やし、利用者の増加がリアルタイムの動向を知るツールとしてのTwitterの価値を高めているように見えますね。

【笹本】そうですね。“ニュース”機能はそうした日本の利用動向から発案・実装された機能で、グローバルでも日本市場向けに先行提供されています。数あるインターネットサービスの中でも、Twitterほど喜怒哀楽、利用者の感情が集まってくる場所はありません。ヘビーにツイートするユーザーはごく一部ですが、リツイートで誰かのツイートを再投稿するだけでも、情報の流れは起こります。まずはTwitterにアクセスして、それを見ているだけでも発見がある。それがTwitterを使う動機付けになっています。

――このところ、キュレーションメディアに関する様々な議論がされています。

【笹本】ニュースに関して、何らかの意思を持つ“ひと”がキュレーションするのではなく、アルゴリズムによって、日本中から発信されているツイートを評価し一覧化しています。“今おきていること”が簡単にわかることで、世の中の流れ、動きを知ることができますし、該当記事を掲載しているサイトへの送客という面でも貢献できていると思います。

――2020年、東京オリンピックのタイミングはTwitterにとって大きな意味があるとのことですが、どのようなサービス拡張、あるいは利用方法のビジョンを持ってらっしゃいますか?

【笹本】アメリカではNFLの試合や大統領のディベートのネット放送をTwitterが行いました。現在進行形で多くの人が同時に反応をするため、極めて濃度の濃い議論の交換やツイートによる意見発信の事例が出てきました。140文字で短文で素早く状況を理解できるのがTwitterの良さです。それに加え、映像と短文の組み合わせを活用するなど、さまざまなアプローチが試されていますから、そうした知見を生かして、2020年の東京オリンピックではTwitterの良さを活かしたサービスを提供したいと思います。