4階の遺体が発する異臭が1階まで臭う

死後のことに頓着しない人はあんがい多い。おれが死んでも何もしなくていい、ひとりで勝手にあの世に行くから構ってくれるな、などとうそぶいたりする。しかし「ひとりで勝手に」死ぬことなどだれにもできない。本人はすっきり旅立ったつもりでも、あとにはしっかり死骸が残る。

すぐにだれかが見つけてくれればいいが、何日も放っておかれたらそのうちとんでもない異臭を放ち始める。そこが賃貸住宅であれば、大家は思い切り頭を抱えるだろう。場合によっては100万円単位の代金を払ってその道のプロに掃除を頼まないと、もはや店子を入れることはかなわない。

『無葬社会』鵜飼 秀徳(著) 日経BP社

本書でまず刮目したのが、その「特殊清掃」のくだりだった。「孤独死の現場は4階なのに、1階からエレベーターに乗った時点で今まで嗅いだことのない異臭を感じた」り、「床下の土にも体液が染み、土からどんどん新しいウジが生まれてハエになって、を繰り返していた」りする。そこに3分もいれば皮膚にも髪の毛にも臭いが染みつき、一度染みついたら容易にはとれない……。つまるところ人は、生きるためにはもちろん、死ぬときにもだれかの世話にならざるをえないのである。

65歳以上の高齢者がいる世帯が全体の4割を超え、その半数以上を単身世帯、または夫婦のみの世帯が占める今だけに、孤独死が今後日常化していくのは間違いない。せめて遺体が異臭を発する前に発見してもらえるように、せいぜい人付き合いをしておくべきか。