「内助の功」が夫のフォロワーを生む

「内助の功」というと多くの方が、戦国時代に活躍し、土佐一国の領主となった山内一豊の妻・千代を思い浮かべるのではないでしょうか。有名な逸話として、千代は嫁入りの持参金で、夫が欲しがった栗毛の名馬を購入したといいます。主君である織田信長の馬揃えの際に、その馬が信長の目に留まり、それがもとで一豊は加増されました。織田信長の性格を知っていての夫へのバックアップでした。

司馬遼太郎の『功名が辻』は、良妻賢母である千代を主人公に、一豊がいくつもの武勲を上げ国持ち大名になっていく出世物語です。ビジネスの世界では出世がすべてということはありません。けれども、個人主義というよりは家族主義的な日本企業にあっては、千代のような奥さまがいないと、すぐれたリーダーにはなりにくいのもまた事実です。

リーダーには、その人物を支えてくれるフォロワーがいるかどうかも重要な要素になるからです。優秀なスタッフが彼の周りを固めていることによって、個人としてもチームとしても、いい仕事ができ、好業績を出すことにつながります。最近はあまり聞かなくなりましたが、家に部下を呼んで、団結を深めることもあるでしょう。

そんな場合に、奥さまが温かくもてなしてくれると、参加した人たちの意気は大いに盛り上がります。まだ日本にも、そんなつき合いが残っています。奥さまが「わが家は別」では、フォロワーがついてきません。夫も上司として肩身の狭い思いをしてしまいます。

弊社における2015年度のスカウト実績の男女比率は、男性85%、女性15%でした。これからは女性活躍が求められる時代です。弊社によせられる女性スカウトの依頼も、2013年の9%から、2014年13%、2015年15%と確実に増加傾向にあります。近い将来、「妻を出世させる夫」がテーマとなる日も遠くないのではないでしょうか。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン社長
1968年生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心掛けている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、 驚異的なペースで 飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務。08年1月代表取締役社長、半蔵門パートナーズ代表取締役を兼任。
(取材・構成=岡村繁雄)
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