国益・公益を顧みないロビーは批判される

「政策を味方につけて企業活動を有利に進めましょう」

こんな提案をされたとき、あなたはどう思うだろうか。ひょっとすると「そんなことやっちゃいけないんじゃないか」と答える人がいるかもしれない。「それって、ロビー活動だろう。周りから何を言われるか」。

『ロビイングのバイブル』(藤井 敏彦、岩本 隆、株式会社ベクトル パブリック・アフェアーズ事業部著・プレジデント社刊)

ロビーという言葉はそもそも日本人にとってなじみの薄いもので、「陳情」「族議員」「特定団体の私利私欲」といったネガティブなイメージを抱いている人は多い。しかし、海外で戦う企業ならば、ロビーが良い悪いという議論ではなく、ロビーがないとその国の市場から締め出されてしまう時代に入ったと感じているだろう。それは、民間企業だけではなく、日本政府も同じだ。アメリカではロビイング開示法(LDA)という法律に基づいて、約3万人がロビイストとして登録されている。ワシントンには、中国政府や韓国政府の利益を代弁するロビイストで溢れかえり、日本に攻勢を仕掛けている。

日本がいくら正論をいっても、なぜか不利な世論を形成されてしまうのは、中国や韓国のロビー力のなせる技だ。企業人もそのことにようやく気づいたというのが現状だろう。三木谷浩史楽天CEOが代表理事となって立ち上げられた新経済連盟(新経連)もその潮流のひとつだ。

ロビーを行うロビイストの雇い主は企業であったり、業界団体であったりとさまざまだ。自らの利益を守るため、あるいは拡大させるために政策決定者に働きかける。自分の主張を通すために献金や接待、その他いろいろなものをちらつかせるということもかつてはあった。広い意味で言えば、かつての「MOF担」的存在もそれにつらなるいわゆる「族議員」も、ロビイストの一種であったといえるのだろう。しかし、アメリカでも日本同様に、国益・公益を顧みないロビーについては大きな批判を浴びることになった。

政策や法律作りの議論は、公益を巡って争うものだ。新しい法律や新しい市場のルールは、本当に公益となるのか。どうすれば公平と言えるかを議論することになる。