「共有名義の不動産」はいさかいの原因

【「共有名義」はすなわち「共憂名義」となる】

マイホームの権利関係を調べて確認した結果、物件はやはり夫婦の「共有名義」だったとする(夫婦がそれぞれ資金を出したり、住宅ローンを借り入れて住宅を購入したりした場合、その土地と建物は2人の「共有名義」に)。

なぜ共有名義にする夫婦が多いかと言えば、夫婦の収入を合算することで、多くのお金を借りられるだけでなく、購入価格の一定割合を税額控除される「住宅ローン控除(減税)」と「住宅売却の3000万円の特別控除」の優遇を2重に受けられる大きなメリットがあるからだ。

ところが、共有名義にしたばっかりに様々な問題を引き起こすこともあるのである。共有名義はメリットもあるが、離婚の場合には下記のような"共憂名義"になるデメリットも含んでいるのだ。

▼共有名義の落とし穴1
離婚の際に、1番もめるのが家を売却する場合だ。共有名義の不動産は「夫と妻」の両方の承諾がないと売却することができない。例えば、夫は売却して得たお金を財産分与として分けあいたくても、妻が慣れた家に住み続けたいと主張してもめるケース。

▼共有名義の落とし穴2
また、夫婦どちらかが失踪などで連絡がとれなくなり、売却の承諾を得ることができない場合もある。

▼共有名義の落とし穴3
どちらが再婚した後に亡くなれば、その共有持分が複数の人に相続されることがある。

▼共有名義の落とし穴4
住宅ローン完済後でも、元配偶者がその共有持分を担保にして借金をしたり、税金の滞納をしたりすれば、差し押さえられたりするリスクもある。

【なぜ妻への名義変更は難航するのか?】

ここで「名義変更をすればいい」と簡単に考えるのは早計だ。

不動産、住宅ローンの名義変更は、役所への届けだけで済まない。不動産は、慰謝料や財産分与の名目で、夫が家を出て妻と子供がそのまま住み続けるというケースが多いが、この際、所有者名義が夫単独あるいは夫と妻の共有から、妻の単独名義にしなければならない。しかし、ここで大事なのは、「不動産の所有名義」と「住宅ローン名義」は全くの別ものだということなのだ。

不動産の所有名義を変更する所有権移転登記は法務局に申請すれば可能だが、住宅ローンの名義変更はなかなか難しい。それは住宅ローンを借りる際の金銭消費貸借契約には「住宅ローンの対象となる不動産の所有者名義を変更する場合は、銀行の承諾を得なくてはならない」という決まりを設けている場合が多いからだ。そして銀行は残債がある間は簡単に所有者名義の変更に応じてはくれない。