PANA=写真
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北朝鮮次期総書記候補 金正銀(キム・ジョンウン)
1983年生まれ。昨年3月の北朝鮮・第12期最高人民会議代議員選挙で当選。金総書記が正銀氏への権力継承を否定したとされる報道もあり、今後に注目が集まる。


 

9月上旬に予定されていた北朝鮮の労働党代表者会は台風被害を理由に延期され、ここで明らかになると期待されていた金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者は、まだ不明だ。だが金正日総書記の三男、金正銀(キム・ジョンウン)氏の去就が鍵となることは間違いないだろう。

母親は高英姫(コ・ヨンヒ)夫人。「政治には興味がない」と公言している異母兄の正男(ジョンナム)、「性格が優しすぎる」といわれる同母兄の正哲(ジョンチョル)を差し置いて後継者最有力候補に急浮上したのが2009年1月。これまでの報道を総合すると、スイスのベルン国際学校に、パク・ウンという偽名で1998年夏から2000年秋まで北朝鮮外交官の子として留学。当時の数学教師の弁によれば「非常に勤勉で野心的」。性格は豪放磊落、金総書記自身が「私に似た性格」と評したとも伝えられる。高い語学力も備えているそうだ。

だが彼の周辺状況は安定していない。韓国消息筋によれば、世襲指導者を党内外に納得させるためには、正銀氏になんらかの功績をあげさせなければならないが、そのためにお膳立てされた昨年の「150日闘争」(全産業生産力向上運動)やデノミ政策は完全に失敗におわった。これら失敗による経済悪化で不満を高める軍部のガス抜きとして行われたのが韓国哨戒艦天安号撃沈は、「正銀氏の指導の成果」とされ、周辺は軍部強硬派で固められていた、と伝えられていた。

9月上旬に訪中したカーター元米大統領は、中国の温家宝首相から「正銀氏が後継者内定というのは西側の間違った噂」と伝えられたことを明らかにした。

指導者交代により、より凶暴な軍事国家の登場となるのか、改革開放路線を模索するのか。動静が見えないかぎり、極東の安全保障は予断が許されない。

(PANA=写真)