孫正義の遺伝子を受け継ぐ精鋭部隊は、どんな言葉や態度で相手の信頼を勝ち取るのか。営業先の証言を集めた。

「一時はソフトバンクに勝ち目はない、と思っていたのですが……」

極楽湯の管理部副部長、鈴木正守氏がこう感嘆の声を上げる。

極楽湯は、北海道から宮崎県まで国内37店舗と中国・上海にスーパー銭湯を展開する業界最大手企業である。各店の店長・店長代理はスタッフの指導育成や店内の巡回はもちろん、取引先との交渉や、近隣法人への宴会プランの営業活動などの業務も担っている。

極楽湯 管理部副部長 鈴木正守氏

ソフトバンクより絶対に安くします

そんな特性を持つ同社は、2005年から翌年にかけて、店長らに支給する携帯電話をauからソフトバンクに切り替えた。当時の極楽湯は10店規模で、拡大路線に乗り出したところ。価格の安さなどコスト面を評価しての導入だったという。

同時期に決裁業務の電子化も行った。紙の申請書を提出して決裁者が捺印していた従来の方式をやめて、データ上の決裁に踏み切ったのだ。

08年にはソフトバンクが取り扱うiPhoneを導入。これにより、たとえば当日中に決定しなければならない「店舗の折り込みチラシ」のデザイン校正を、外出先からもPDFで確認できるなど、業務のスピード感はさらに増した。

そんな長年の関係の潮流が変わったのが、2013年のこと。

「あれは2月でしたが、全社的にコピー機のリース契約などを見直す際、通信回線や端末もその対象に含めることになったのです」(鈴木氏)

通信に関しては、ソフトバンクのほか取引実績のあるauの代理店に声をかけ、平等な条件で2社から提案を受け付けることになった。といっても、主眼は経費の削減であり、現実には「au側が安い値段を出してきたらそれで決まり」という空気が極楽湯社内にはあったという。

それを察してか、au代理店の営業姿勢は明確だった。

「現在契約している御社の請求書を全部見せてください。絶対にそれよりも安くしますから」といったアプローチを鈴木氏は受けた。