学習シーンにより光の種類が変わる照明スタンドも登場

共同研究をする大学は商品によって異なるが、バンダイと大学の間に入るのが日立ハイテクノロジーズと日立製作所だ。日立製作所は、1995年に脳機能を計測する「光トポグラフィ」という技術を世界に先駆けて実用化するなど、脳科学の分野において深い知見と実績を有している。前出の佐藤氏が語る。

脳活動の計測による結果を、新商品開発に取り入れる 「光トポグラフィ」と呼ばれる日立製作所が開発した“脳機能を可視化する”技術を使っておもちゃを開発するプロジェクトが進行中。例えば、5~6カ月の赤ちゃんにいないいないばぁを見せたとき、人よりアンパンマンのほうが注目度が高かった。こういった結果を取り入れたおもちゃが続々生まれている。

「人間の脳は、活動すると酸素やエネルギー源を供給するため局所的に血液量が増えることが知られています。この脳活動に伴う血液量変化を光で計測する技術が光トポグラフィです。冬の曇天時の太陽光より弱い光を利用しているため、赤ちゃんの脳でも計測することが可能です。今までも医療分野で活用されてきましたが、さらに幅広い分野への応用を模索していた中で、バンダイとの共同プロジェクトが実現したのです」

光トポグラフィの技術が活用された商品はベビートイに限らない。例えば、通信教育大手のベネッセコーポレーションとの共同プロジェクトでは、学習照明スタンド「調光式学びライトLED」を開発した。

これは、学習の使用シーンに合わせて6種類の光を選択できる商品。例えば、青白い光は30分程度の短時間に集中して勉強したいときに適しており、オレンジ色の光は長時間持続して勉強したいときに効果を発揮する。大学生を対象に検証が行われており、その効果は立証済みだ。

「小学校低学年ぐらいだと、まだ長時間集中して勉強することは難しい。であれば、青白い光に30分のタイマーをセットし『この光がついている間は頑張って勉強しなさい』という使い方ができます。高校受験や大学受験などでは、オレンジ色の光で腰を据えて勉強する、というような使い分けが可能です」(佐藤氏)

こうした脳科学の知見を活かした商品に対し、日立製作所では「Brain Science(ブレインサイエンス)」マークを付与している。第三者の専門家による審査会の審査を通った、いわば“お墨付き”の証明だ。バンダイのベビラボやブロックラボの商品にも、このブレインサイエンスマークは付与されているが、おもちゃではバンダイの商品だけだという。

アンパンマンはなぜ子どもに絶大な人気なのか?

今後どんな脳科学を基にした商品を開発していくのか。村瀬氏は、詳細については語ってくれなかったが「赤ちゃんが泣きやまなかったり、寝てくれなかったりすることに悩むママは非常に多い。そうした親の声に応えられる商品を出したい」という。

それにしても、アンパンマンはなぜこれほど子どもから人気があるのか。男の子でも女の子でも、大抵の子どもはアンパンマンを好むという話はよく聞く話だ。光トポグラフィを使った実験で、5~6カ月の赤ちゃんに人によるいないいないばぁと、アンパンマンによるいないいないばぁを見せたときの脳活動を比較計測したところ、アンパンマンのほうが脳血流の変化量は大きかったという。

子どもがアンパンマンを「好む」ということは実証されたわけだが、丸や三角、四角などわかりやすいデザインが多い、原色ばかりの色使いが認識しやすい、など諸説ある中で、現在の脳科学では、まだその「理由」までは解明できないようだ。

【関連記事】
なぜスマホに子守りをさせてはダメなのか
ヒットを生み出す鍵は「本能」にあり
なぜ赤ちゃんはいいものを触っただけでわかるのか
北欧発知育スクール――「ブロック遊び」で科学、数学、アートの力もついて月謝1万円強
「プリキュア」に学ぶ子どもマーケット攻略法