AIを活用したウェブ配信の教育サービス

高校生たちの毎日は、勉強に加えて、学校行事に部活動と忙しい。なかでも地方に住む現役高校生たちにとっての悩みは、高度な受験教育を求めても、それに応えてくれる予備校や講師が、東京などの大都市圏に集中していることだった。「スタディサプリ」は、この従来型予備校の展開力の限界を乗り越えるべく開発された。ウェブ配信のビデオ講義であれば、場所や時間に制約されずに勉強できる。また教室が不要なことなどから、低コストの事業展開も可能となる。

ウェブというデジタル空間でのサービスは、AIの活用も進めやすい。たとえば、講義の単元ごとの確認テストなどの採点は、AIを使えば自動化できる。あるいは、受講生が理解に困難を覚えたり、ミスをしたり、興味を失ったりしやすい箇所の把握は、教室のアナログの講義では、受講者の表情や、確認テストなどの得点の全体的な傾向から、講師が直感的に判断するしかなかった。

ところが、ウェブ配信の講義であれば、受講者1人ひとりが、どこで視聴を止める(興味を失う)ことが多いか、そしてどこで視聴をリプレイする(わからず、戸惑う)ことが多いかを計数化し、問題箇所を客観的に把握できる。こうした講義視聴データを、さらにAIを駆使して、確認テストの個々人の回答とつき合わせていけば、講義や教材のシステマティックな改善につながる。

さらにAIを活用したウェブ配信の講義は、優秀な講師を惹きつけるインセンティブにも長けているように思われる。

教育者として本当に優れた人材とは、単に有名であったり、話芸に富んでいたり、知識が豊富だったりするだけの人ではない。彼らが一線に立ち続けることができるのは、向上心に富み、それを満たすための行動を絶やさないからだ。このような人たちには、AIを活用したウェブ配信は、直感だけに頼る講義よりも、自らの解説方法の改善や、教材の開発などを加速化する、やりがいのある講義の方法となる。

そしてウェブ配信であれば、年1回ほどのビデオ撮りさえすませれば、対面型の講義とは違い、各所の教室に出向かなくても多数の受講者に対応できる。収入を確保しつつ、より多くの時間を自らの講義スキルの向上や、教材の開発に投じることができるようになる。