このタイトルにして、帯には「最後の告白」。艶やかな内容を連想させるが、著者が出会い、鍛えられたという“女傑”を振り返る回顧録である。日本の危機管理や要人の警備に関わってきただけあって、吉田茂の三女・麻生和子を筆頭に、塩野七生、緒方貞子など、錚々たる名前が並ぶ。頻出する言葉も「ノーブレス・オブリージュ(高い地位に伴う義務と責任)」だ。

佐々淳行(さっさ・あつゆき)
1930年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁。「東大安田講堂事件」「連合赤軍あさま山荘事件」等では警備幕僚長として危機管理に携わる。89年昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。

「沖縄を行幸中、過激派から火炎瓶を投げられた当時の美智子妃は、皇太子殿下の前に進まれて炎から守ろうとされました。来日したエリザベス女王は、ステッキ代わりに傘を1本持っている護衛が1人だけ。にもかかわらず、『襲われるのもひとつの任務。よく卵を投げられているから、気にしないで』と平然としている。世界共通で本物のセレブリティは心が強いのだと学びました」

一方で隠れた英雄にもスポットを当てる。国家公安委員に就任すると、累積していた警察官・自衛官OBなどの叙勲を、賞勲局長のもとに日参して実現させた岩男寿美子。湾岸危機の際、人質解放のためバグダッドに向かうことを著者から依頼され、単身で乗り込みトップと堂々渡り合った参議院議員の広中和歌子などだ。

「岩男さんが手がけたのは、もともと国が乗り気でなくて、男だったら3日であきらめている仕事。それを彼女1人でやり遂げた。広中さんに交渉を頼んだのは、女性が『人質を返せ』と訴えると、母性愛ゆえの説得力があるから。僕だって行けと言われたら二の足を踏んでいましたよ。とにかく立派でした」

解決しそうもない問題を度胸と粘り強さで収束に導く女性たち。それを目の当たりにしてきた著者は、「使命感に燃えた女性の行動力はすごい」とうなる。またいざというとき、毅然として組織を支えるのは女性管理職ではないか、と考えるようにもなった。

「だから職場で女性を敵にしてはダメ。口ゲンカしても勝てないし、往々にして女性のほうが正しいんだから(笑)。一番の愚は『男のほうが上』という態度ですね。さまざまな職場を見てきた中で、すぐ責任回避しようとする男も少なくなかった。決して偉いわけじゃないですよ」

保守の印象が強い著者らしく、曽野綾子、櫻井よしこ、山谷えり子らの功績や人間性を高く評価しながら、リベラルの女性にも言及。護憲派の脚本家・小山内美江子がカンボジア難民支援のため、現地で汗水流して働く姿を「見習うべき女傑」と称えるなど、イデオロギーが異なっていても、現場主義で信条がぶれない人物には敬意を表している。

そして記憶に残る女性を思うままに挙げていくと、興味深い共通点に行き当たった。皇后美智子さま、麻生和子、緒方貞子、曽野綾子……。聖心女子学院の教育を受けた女性が多いのだ。

「安倍昭恵さんもそう。『居酒屋の女将』のような面をマスコミは面白がりますが、自ら更生施設を訪問するような人。美智子さまの勇気を曽野さんに訊ねたら、『あれが聖心教育。「自己犠牲と奉仕の信念」なのよ』と教えてくれました。そういう姿勢の女性に、今後の日本を支えてほしい」

さらに小声でつけくわえたのが、「私の家内も聖心でね」。本書の最後には「私が頭の上らない唯一人の『マドンナ』」として夫人の名前を挙げている。