シャープを買収する台湾鴻海集団を率いる郭台銘(テリー・ゴウ)氏は、専門学校卒業後、母親から借りた資金で創業した小さな町工場を世界最大のEMS(電子機器受託製造)企業に育て上げた立志伝中の人物。だが独裁者タイプなうえに、1日16時間働く猛烈な仕事人間で、部下にもそのレベルを強要する。高給をエサにヘッドハンティングされた若手幹部らは、数年で心と体を病んで辞めていく。米アップル製品の委託製造などを手がける同集団傘下のフォックスコン中国工場では、従業員が非人間的な労働環境の下、心労で次々飛び降り自殺する事件も起きた。このときは「最近の出稼ぎ労働者は心が弱い」と非情なコメントをし、中国社会で炎上した。

台湾鴻海集団会長 郭台銘(AFLO=写真)

二子をもうけた愛妻を乳がんで亡くした3年後、24歳年下の人気振付師と再婚、三子をもうける精力絶倫ぶり。台湾生まれだが祖籍は中国山西省で、ビジネスの軸足も中国。2014年、中国とのサービス貿易協定締結に反対する「ひまわり学生運動」が起きた際は、「民主主義でメシは食えない」と批判。16年の総統選前には「中台平和協定を締結すべき」と訴えるほどの親中派だ。中国メディアは、シャープ買収を「中国企業による日本企業買収」と報道する。

「名門シャープが台湾資本と中国市場の力で息を吹き返す」というシナリオが期待できるものの、残留が約束されている日本人経営者と社員たちが、非情な郭のビジネススタイルについていけるか。日本企業の生き残り戦略の試金石となる案件だ。

台湾鴻海集団会長 郭台銘(Terry Gou)
1950年、台湾生まれ。中国海事専科学校(現台北海洋技術学院)卒業。兵役を経て1年間企業に勤務。74年、鴻海プラスチック企業有限公司設立。