正規・非正規の総雇用者数は4.9%増だが……

2016年も、春闘のシーズンを迎えた。

ベースアップや定期昇給など賃上げに関する記事が新聞を賑わせそうだ。昨年は、政府主導の"官製春闘"のもと、「こんなにベースアップが広がった」というトーンの報道が相次いだ。だが、そうした記事に違和感を持った人が少なくなかったのではなかろうか? なぜなら、自分自身の賃金が実際には大して上がらなかった人が多かったからだ。

「実際のところは、どうなんだろうか?」。そんな疑問にお答えするデータを披露しよう。

筆者が、賃金調査として信用をしているのは、次の2つである。

・国税庁の民間給与実態調査(年末調整の結果を集計したもの)
・厚生年金事業年報(厚生年金の保険料の元になる賃金の動向がわかる)

この2つに共通しているのは、民間勤労者の賃金の現物を調べていることだ。いわゆるサンプル調査ではない。この国税庁の民間給与実態調査は、最新版のものが平成26年である(平成28年1月時点)。

この調査は、正規と非正規とを区分するようになったのが平成24年からである。そこで同一比較が可能な、平成24年(2012年)と平成26年(2014年)とを比較してみた。この調査は「1年を通じて勤務した人」と「1年を通じて勤務していなかった人」に区分されているので、「1年を通じて勤務した人」のデータをチェックした。

◎雇用数は195万人増えた一方……

雇用者数は、年収ごとに集計されている。企業規模は資本金で区分されている。最小は資本金2000万円未満であり、筆者はそれを「中小企業」(以下、中小)とした。最大は資本金10億円以上であり、それを「大手企業」(以下、大手)とした。

年収は100万円単位で区分されているが、筆者はそれを「800万円超」「800万円以下」「400万円以下」という3区分にした。筆者は、こんな印象を抱いているためだ。

・「800万円超」上流のサラリーマン(いわゆるエリート)
・「800万円以下」中流のサラリーマン(いわゆる中間層である)
・「400万円以下」下流のサラリーマン(男性でこの年収だと非婚化になりやすい)

使用したのは「第7表 企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額(合計)」である。
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2014/minkan.htm

正規と非正規を合計した雇用者数は、3999万人→4194万人となり、195万人増(4.9%増)となった。正規は92万人増(3.1%増)、非正規は102万人増(10.4%増)だった。

雇用者の増加は、非正規の方が大きいものの、正規の方も増えており、アベノミクスの効果はあったと判断して良いと考える。ところが、である。本題はここからだ。