日用品世界最大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。世界約70カ国に事業拠点を持ち、販売網は世界180カ国を網羅する。世界売上高は約9兆円。桐山一憲氏は、新卒でP&Gジャパンに入社。44歳で日本人初となる日本法人の社長に就任し、その後もアジア人として初めてアジア統括責任者に就いた。
世界で活躍し、各地でリーダーを育成してきた桐山氏に、「グローバルリーダーに必要な条件」を聞いた。聞き手は、早稲田大学ビジネススクール竹内規彦准教授。
グローバルリーダーに必要な資質は心技体プラス「徳」
──早速ですが「グローバルリーダーに必要な条件」は何だと思いますか。
ビジネスの世界に限らず、人を動かすには必ず「情熱」が必要だと感じています。情熱を伝えることで、相手のマインドが変わり、行動が変化する。
P&Gで、30年間さまざまなリーダーを見てきましたが、エリアやブランドを問わず結果を出し、部下の才能を引き上げる優秀なリーダーは、必ず情熱を持っています。どれだけ経験やスキルが豊富でも、それだけではトップリーダーにはなれません。
リーダーに必要な条件は、スポーツの世界でよく使われる「心技体」です。「心」はすなわち情熱。「技」は過去の経験に加えて、自身の強みを磨く力。そして、世界を飛び回るグローバルリーダーには「体」力も必要です。
私はここに「徳」の大切さを加えています。「徳」は平たく言えば「相手を受け入れる力」。国籍や人種、性別、年齢、宗教の多様な人々が集まるのがグローバル企業です。自分とは育ちも考え方もまったく異なる人と対するとき、いいリーダーは、まず相手を理解し、その考えを一度すべて受け入れます。それがベースにないと、相手の能力を引き上げることはできません。