リーダーは受け身の人間をつくらない

──P&Gは、ダイバーシティ(多様性)推進企業の手本としても注目されています。従業員の多様性が重要だと考えつつも、なかなか推進ができない日本企業の中には、「多様な意見を聞いていると、業務効率が悪くなる」という意見もあります。

リーダーが部下の意見を聞きたいと思っても、自発的な意見はなかなか出てこないものです。でも、部下が意見を言わなくなると、行きつく先は「受け身の人間が増える」だけです。

また、決定を下す前の「根回し」に時間を割く人をよく見かけます。ミーティングのためにほかのところでミーティングをしているというケースです。ミーティングで透明性を持った議論をしないと、その場で勝負しようと熱意を持って意見を言ったメンバーはやる気を大きくそがれてしまう。もしくは同様に、根回しをするようになる。どちらも組織にとって有益ではありません。

ここで勘違いしてほしくないのは、全員の意見をまんべんなく聞くことがリーダーに求められるのではないということです。例えば、AかBかを決めるとき。リーダーに必要なのは、それぞれにどういう意見があるかを聞きだす能力。議論が行き詰まるなら、Cという選択肢を提示する能力。そして、最終的にはデータとファクト、経験からどれか1つを決定する力。それらが、リーダーに必要な能力です。

従業員が「意見を言えない」環境は、何かを決定するときに判断材料が不十分になるというリスクがあることをリーダーは認識しておくべきでしょう。