2015年12月、政府は第4次男女共同参画基本計画を閣議決定した。2020年度末までに中央省庁の課長・室長職で7%、2020年の民間企業の女性課長職割合を15%など、各分野での女性登用目標を明記している。2015年の国家公務員の本省課長・室長職が3.5%、民間企業の課長相当職は9.2%ということを考えれば、相当取り組みを強化しない限り実現できない数字である。
しかもこの数字は、従来第3次男女共同参画基本計画にあった「2020年までに指導的な地位に占める女性の割合を30%にする」という目標に比べると、大きな下方修正と言わざるを得ない。また、こうした数字を決めて女性登用を増やすという動きについて、企業では「実力がない女性管理職が増えるだけだ」「おかしい」といった厳しい声も聞かれる。
世界経済フォーラムが毎年発表している男女平等指数(ジェンダーギャップランキング)の2015年版において、日本は調査対象145カ国のうち101位となった。先進国では最下位、G7+BRICsに限ってもかろうじてインドより上、という低位置にいる。そんな現代日本において、本当に女性の活躍推進は可能なのか? 女性学、ジェンダー研究のパイオニアである上野千鶴子さんに話を聞いた。聞き手は、プレジデントオンライン編集部の吉岡綾乃。
罰則規定のないザル法で、数値目標など掲げても守れるわけがない
――男女共同参画基本計画の数値目標が、「2020年までに30%」から「中央省庁の課長・室長職で7%、2020年の民間企業の女性課長職割合を15%」と大きく引き下げられました。「そもそも無理な数字だった」「クオータ制(数字割当制)は今の日本では無理だったんだ」といった声も多いですが、どのように見ていますか。
クオータ制になっていないのに、守れるわけがないと思っていました。当然の結果というか。
――クオータ制になっていないというのはどういうことでしょうか?
数値目標を掲げているだけ、単なる努力目標なだけで、罰則規定もない、ザル法だということです。男女雇用機会均等法もザル法でしたし、男女共同参画社会基本法も理念法ですから強制力がありません。法律を作るんだったら、実効性がある法律にすべきです。
――法律を作っても、実効性がなければ無駄だし数値目標に届くわけがない?
口先だけなことが問題なんです。まず政党がクォータ制を実施すればよいのに、それもやらない。そんなもの、企業が守るわけがありません。実効性がなく、義務でもない。成果が出るわけがないでしょう。