「雨の日の数字」を準備せよ

中長期で考えるときは、ロバスト(強靭)な発想が必要です。想定外の環境変化は必ず起きるものです。そのときに「ダメだった」では無責任。大きな環境変化があっても大丈夫なように、何らかの余裕を持って計画を立てたほうがいい。

上司に事業プランを提案するときも、ロバストさを意識したほうがいいでしょう。麻雀でいうと、ずっとハコテン(点数がマイナスになること)すれすれで、オーラス(最終局)で一発逆転を狙うようなプランを持ってくる社員もいますが、綱渡りでは何か起きたときに事業が崩壊するおそれがあります。それよりも点数を維持しながら、あがれるときにあがってプラスになるプランを目指すべきです。

プランを審議するとき、私はいつも「晴ればかりではない。雨が降ったときどうなる?」と聞きます。これに対して、調子のいい答えを返す社員は信用できない。数字の裏づけがあってこそロバストなプランといえます。

数字を操る力は、アピールする場面以外でも必要です。いまエンジニアは、コンピュータで設計します。だからといって自分でオーダーエスティメート(概算値の見積もり)を計算することなく、すべてコンピュータに頼るのは危険です。自分で計算できる力がないと、インプットする数値を間違えたとき、おかしな結果が出てきても違和感を抱かずに見逃しやすいのです。ですから、最初のラフな設計くらいは電卓で計算できるようになったほうがいい。

基礎的な計算力が必要なのは、経営や普段の仕事も同じです。たとえば成果が「3」のものを「5」に増やすには、どの数字をどう変えればいいのか。

ここで「頑張ります」ではダメ。その理由を瞬時に計算して説明できる人は、やはり仕事もできます。数字力は、個人としての根っこといってもいい。表からは見えづらいかもしれませんが、しっかり根を張っている人とそうでない人とでは、きっと花の咲き方が違ってくるはずです。

▼柵山流「数字思考」3つのポイント
1.目先の数字より根っこが大事
2.中長期の目標は「ロバスト発想」で
3.数値化して理由を伝える

三菱電機社長 柵山正樹
1952年、兵庫県生まれ。76年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、77年東PROFILE● 京大学大学院工学系研究科博士課程中退、三菱電機入社。常務執行役、専務執行役、執行役副社長などを経て2014年より現職。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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