2016年2月21日(日)

「平均のワナ」に陥っていないか -ボストン コンサルティング グループ日本代表 水越 豊氏

PRESIDENT 2015年3月30日号

宮内 健=構成 宇佐美雅浩=撮影
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進捗報告、来期の予算交渉、コスト削減提案、新規事業企画……数字で相手を動かすポイントを経営トップが指南する。

なぜバブルを見抜けなかったか

その数字から何を成し遂げたいか。数字を見るうえで大切なポイントはここにあると考えています。

ボストン コンサルティング グループ日本代表 水越 豊氏

その際、陥りがちな落とし穴は「平均」だけを見て「分布(ばらつき)」を見ないことです。平均が悪いわけではありませんが、多くの場合、ヒントが潜んでいるのは分布です。クラスの平均点が50点だったとしても、100点と0点の生徒がそれぞれ10人ずつなのか、30点から70点の間に散らばっているのかによって、先生がとるべき教え方はまったく異なるでしょう。「どんな分布でこの平均値になっているのか」を考えることです。

物事のトレンドを最近の数字だけで判断するのもよくある落とし穴です。直近のトレンドが一過性のものかどうかを判断するには、スパンを長くとって見る必要があります。日本で1980年代末に不動産バブルが発生したとき、不動産を買った人の中には「まだ値上がりが続く」と判断した人も多かったでしょう。しかし、インフレ調整した地価の変動を戦後から眺めると、あの時期の上昇は異常だったことがわかります。その数字を見れば、不動産の値上がりがずっと続くと考える人は少なかったのではないでしょうか。

絶対値しか見ないことも多い。利益が増えていても、業界平均や競合に対してどうなのか相対的に見ることも重要です。自社内同士でしか比較しないこともあります。たとえばA事業部は売り上げが伸び利益も出ているが、B事業部はけしからんといった場合です。しかし、実情はA事業部が参入している業界は市場全体が伸びていて、競合も利益が出ている。実は競合より利益率で劣っているかもしれません。一方でB事業部のおかれる市場環境は厳しい状況で、B事業部は競合に比べて競争力が高い場合もあるでしょう。

もちろん、最初から「この数字さえ見ておけばいい」というものはありません。どの数字を見るかはその時々の課題によって変わります。重要なことは「どのように数字を見るか」であり、その前提になるのが「定量化」です。

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