なぜ、 「40代の独立」は裏切りなのか?

同じ『週刊文春』誌上では小杉理宇造氏がジャニーズ事務所を代表してこう発言している。

<彼女(筆者注・飯島氏)には残念だけど、飯島さんの経営方針はジャニーズ事務所の本社、及びオーナーの意に反している。だから解任するしかないと伝えました。彼女は「辞任にしてほしい」と言い、それを知ったジャニーさんは「そうだよね」と。(中略)戻ってきたメンバーにとっても、どうすれば一番いいのかを考えることも重要だと考えています。ただ、四人はメリーさんに滅茶苦茶、怒られるだろうけど>

4人が事務所を離れることをメリー喜多川氏が怒っている様子がわかるが、それにしても独立することはそんなに悪いことなのだろうか。

SMAP独立騒動を報じる週刊文春1/28号、1/15付けのスポーツニッポン、ニッカンスポーツの1面より

メンバー全員が40歳を超え、独立して再スタートを切りたいと考えるのは何ら不思議ではない。それ以上に異様なのはSMAPの謝罪会見や「裏切り者は許さない」といった経営者の執拗な言動である。

その背後には日本の伝統的な家族主義的経営が影を落としているように思う。家族主義的経営とは、資本家・経営者と従業員の関係は金銭を媒介にした契約関係ではなく、人と人が結びついた親子関係になぞらえ、両者の利害は一致するという考えだ。

この考えの起源は日本の伝統的な「家」概念にある。社会人類学者の中根千枝氏はその著書『タテ社会の人間関係』の中で日本の会社「家」概念に結びつけてこう分析している。

<経営者と従業員とは「縁あって結ばれた仲」であり、それは夫婦関係にも匹敵できる人と人の結びつきと解されている。したがって従業員は家族の一員であり、「丸抱え」という表現にもあるように、仕事ではなく人を抱えるのであるから、当然その付属物である従業員の家族がはいってくる。(中略)私生活にまで及ぶということは、従業員の考え方・思想・行動を規制してくるものであり、「家」における家族成員(正確には家族員)のあり方と軌を一にしてくるのである>

こうした経営者と従業員の家族的一体感が滅私奉公的な集団的エネルギーを生みだし、日本の高度成長の原動力となったのは周知の通りだ。社は従業員だけではなく、その家族も含めて手厚く支援し、それと引き替えに従業員も会社に尽くそうとする。