権限を強化してもトップには逆らえない

歴代3社長の辞任に発展した東芝の不適切会計問題。監査の仕組みが幾重にもはりめぐらされていたのに、なぜ発見が遅れたのだろうか。

不正のチェックに関して強い権限と責任を持つのが監査役だ(東芝は委員会設置会社なので監査委員)。監査役は会社法で定められた機関で、株主に対して取締役の職務執行をチェックする責任を負う。権限は強力で、違法行為を見つければ、取締役会で承認されていることでも、その行為を差し止めることが可能だ。

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不適切会計をチェックする複数の監視システム

一方、取締役会の中では、社外取締役が第三者によるチェックの役割を担っている。社外取締役は法律で義務化されているわけではないが、東証は昨年6月から適用したコーポレートガバナンス・コードで、独立性が高い社外取締役を2人以上選ぶことを上場企業に求めている。東芝にも4人の社外取締役がいたが、どうしてこれらの監査は機能しなかったのか。弁護士・公認会計士の樋口達氏は、「あくまでも一般論」と前置きしたうえで、次のように解説する。

「監査役や社外取締役は株主総会で選任されますが、株主総会に選任の議案を提出するのは取締役です。そのためトップが関与している不正に異を唱えようとすれば、議案の名簿から名前を外されて、いまの地位を失いかねない。そうした構造が、よほどの確証がない限り不正の指摘に二の足を踏ませてしまうのです」

監査役や社外取締役でさえ機能しづらいのだから、社内の1部署にすぎない内部監査部門はなおさら期待できない。東芝の会計監査部も、不適切会計の可能性を認識していたが、指摘は行わなかった。