2016年1月8日(金)

わざとゆっくり走る鉄道が、なぜ儲かるのか

PRESIDENT 2015年10月5日号

著者
栗木 契 くりき・けい
神戸大学大学院経営学研究科教授

栗木 契1966年、米・フィラデルフィア生まれ。神戸大学経営学部卒業、神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。2012年より現職。著書に『ビジョナリー・マーケティング-Think Differentな会社たち』(共著)、『マーケティング・コンセプトを問い直す-状況の思考による顧客志向』などがある。

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神戸大学大学院経営学研究科教授 栗木 契=文 大橋昭一=図版作成 共同通信社=写真
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“スピードの経済”が鉄道にもたらす4つの効果

国内では昨春、北陸新幹線が開通し、東京から金沢までの移動時間は2時間半を切るようになった。かつての在来線特急を利用していた時代には、この移動には3時間半ほどが必要だった。

スピードアップは観光客を呼び込む。昨春のゴールデンウイークには、北陸新幹線の利用者は39万人と、一昨年の特急利用者の3倍に増加。金沢城公園と兼六園の入園者は2倍前後に増え、金沢21世紀美術館では過去最多の入館者を記録したという。

日本の大動脈である東京-大阪間でもスピードアップが進む。2014年には、リニア中央新幹線が着工した。現在の新幹線の約2倍の時速500キロで、東京-名古屋間を約40分で結ぶ計画だ。一方で、昨春のダイヤ改定から、東海道新幹線の最高時速も270キロから285キロにスピードアップした。今春には、北海道新幹線が開業する。

スピードアップは、事業の収益性向上に貢献する。鉄道会社がスピードアップにしのぎを削るのは、技術者の夢であると同時に、マーケティング上も合理的だからである。

このスピードアップがもたらす経済効果は、鉄道事業だけのものではない。広くビジネス一般において、スピードを上げることから各種の収益向上をうながす効果が生まれる。これらを総称して、甲南大学教授の加護野忠男氏は“スピードの経済”と名付けている(『〈競争優位〉のシステム』PHP新書、1999年)。

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