2015年12月8日(火)

人工知能の発達で“消える”職業

PRESIDENT 2015年6月15日号

著者
松田 卓也 まつだ・たくや
神戸大学名誉教授、宇宙物理学者、理学博士

1943年生まれ。70年、京都大学大学院理学研究科物理第二専攻博士課程修了。京都大学工学部航空工学科助教授、神戸大学理学部地球惑星科学科教授、日本天文学会理事長、ジャパンスケプティックス会長などを歴任。著書に『2045年問題~コンピュータが人類を超える日』ほか。

神戸大学名誉教授 松田卓也=文 平良 徹=図版作成
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人間よりはるかに高い知能の誕生は2045年?

2015年初頭、NHKが「NEXT WORLD 私たちの未来」と題して放映した番組に大きな反響があったという。番組の一部は30年後の45年を扱った近未来ドラマだが、米国の未来学者レイ・カーツワイルによれば、この45年という年に、世界は技術的特異点(シンギュラリティ)に達するという。

技術的特異点(以下、特異点)とは、いう人によって多少のニュアンスの差があるが、人間よりはるかに知能の高い超知能が誕生する時点である。超知能は機械に補助された人間かもしれないし、あるいは機械知能かもしれない。前者の場合は超人類(トランスヒューマン)と呼び、後者なら機械超知能である。超人類は生身の人間ではなく、地頭を人工知能で補強したサイボーグである。

1人の普通の人間の知的能力を1H(ヒューマン)と定義すると、カーツワイルによれば、人工知能の能力は29年には1Hを突破し、45年には10億~100億Hになるという。この数字は全人類の人口に匹敵する。したがって、特異点では人工知能の能力が、全人類の知的能力の総和に匹敵するということもできる。

ここで、人工知能を狭い(弱い)人工知能と汎用(強い)人工知能の2種類に分類してみよう。狭い人工知能とは特定目的の人工知能であり、汎用人工知能とは人間のように常識を持ち、なんでも一応はこなせる広い知的能力を持った人工知能である。

人間のプロ棋士を凌駕する「狭い人工知能」将棋ソフト。

現在、世界に普及している人工知能はすべて狭い人工知能である。たとえばチェスの世界チャンピオンを破ったIBMのディープ・ブルー、ジョパディ! というクイズで人間のチャンピオンを破ったIBMのワトソン、iPhoneに搭載されているバーチャル・アシスタントのSiriなど。グーグル検索でも、アマゾンでの買い物でも、背後にはこの狭い人工知能が働いている。狭い人工知能は人間のような意識を持っておらず、哲学的な観点から弱い人工知能と呼ぶこともあるが、特定分野では人間よりはるかに強力なのだ。

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