トップと一番下は“安泰”、中間の職種が“不安定”

もう1つの要因は、労働問題だ。アップルはiPhoneの生産を台湾の企業に委託し、その台湾の企業は中国で100万人もの労働者を雇用している。しかし労働環境があまりに劣悪で、労働者による労働争議が起きた。それに対する台湾企業の経営者の対応は、100万台のロボットを導入して、労働者に置き換えるというものだ。

一方、人工知能に(当面は)できない知的な仕事とは、企業のトップの意思決定、科学者の科学研究、芸術家の創作活動、知的活動ではないがスポーツ選手などであろう。たとえばロボットに相撲を取らせたり、野球をさせたりしても面白くない。茶道をロボットがしても味気ない。

これらの知的な仕事、創造的な仕事は当面は安泰である。

つまり安泰な仕事とは、高度で知的・創造的な仕事と、それとは逆に低度ではあるが、ロボットや人工知能にできないか、あるいはやってほしくない仕事である。安泰でない仕事は定型的な知的・肉体的労働である。具体的にはオフィスにおいて、トップでもなく、一番下でもない、つまり中間の職種なのだ。

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図 コンピュータ化によって失業する確率(業種別)

このようにトップとボトムが安泰で、中間が不安定であることを、仕事の安定性のU字カーブという。英オックスフォード大学の研究者は米国の702の職種についてコンピュータ化による失業の確率を計算した。その結果、米国の雇用の47%が危機にあるという。その失業のU字カーブを図で示す(図参照)。

図の凡例で上のほうの職種がより安泰、下のほうが不安定である。図の右側の高いと記した部分はコンピュータ化される確率が高く、失業しやすい部分であり、ここが米国全体の雇用の47%を占める。サービス、セールス関係、事務職とその補助が多い。逆にコンピュータ化が困難な仕事は左端であり、全雇用の33%を占める。読者の方々の属する業界の先行きに見当をつける際の参考となるのではないか。

(平良 徹=図版作成)
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