今、国際的に人民元の地位が高まっていることは確かである。私自身も数年前から手持ちの円預金の一部を人民元に切り替えている。しかし、元がまもなくドルをのみ込み、世界の基軸通貨になるといった考えには賛同できない。いくら強くなっているとはいえ、まだ自由に両替できない通貨に、そこまでの神通力はないと思う。

それでも今回、『中国元がドルと世界を飲み込む日』を取り上げたのは、元の勢いに関する議論に注目したのではなく、アフリカに対する中国の戦略をめぐる発言に目を奪われたためだ。

中国の対アフリカ援助と欧米のそれとの違いについて、著者はルワンダのポール・カガメ大統領がドイツの新聞とのインタビューを引用している。その発言の趣旨は次のようなものだ。

「アフリカに必要なのは貧困救済の開発援助ではなく、経済発展に必要な投資だ」。中国がそのニーズに応えているのに、「欧米はアフリカを前進させない援助しかせず」、しかも核廃棄物や産業廃棄物を捨てて、アフリカを汚染している、という。

カガメ大統領は、アメリカで軍事訓練を受けた経歴をもち、親米派と見なされている。長年にわたり、アフリカが欧米の「援助漬け」から脱却して自立するための国際運動を展開してきた。著者は「そんな彼が中国の援助を評価し、欧米を批判したことには大きな意味がある」と書く。

実際にアンゴラでは、中国がODA名目で20億ドルの融資を行い、アンゴラ政府は日量1万バレルの石油を17年間にわたって中国に供給することで返済する。20億ドルの融資は1万戸の貧困者向け住宅の建築、内戦で破壊された南部の鉄道や道路の補修などに使われる。

しかし、こういった事実は日本や欧米では正確に報じられていない。「アフリカの資源略奪」というのが、日本と欧米が中国のアフリカ進出を見る際の基本的なトーンになっている。

中国から資源を略奪されていると報じられるアフリカ諸国の行動を見ると、こうした報道とはまったく逆行する傾向にある。

2009年7月、オバマ米大統領がアフリカを訪問した。しかし、滞在わずか1日で、ガーナだけだった。一方、中国の胡錦濤国家主席が同年にもアフリカを訪問し、マリ、タンザニア、セネガル、モーリシャスという天然資源に恵まれていない国々を回り、インフラ投資を約束した。

アフリカ重視の外交路線は毛沢東・周恩来時代の政策の継承と見ていい。ここ10年で胡錦濤はアフリカを6回訪問。国家主席になってからは、3回18カ国訪問している。

10年に6回もの訪問という事実もそれなりの重みをもつが、そのうち5回までがその年の胡錦濤の初めての外国訪問であり、アフリカ重視の姿勢が並大抵のものではないことを物語る。

そんな意味で、私は著者のアフリカと中国との関係を見る目はしっかりしていると思う。