2015年11月25日(水)

英国のフェイスブックはなぜ法人税80万円なのか

PRESIDENT 2015年12月14日号

著者
木村 正人 きむら・まさと
ジャーナリスト

木村 正人1961年生まれ。京都大学法学部卒業。産経新聞大阪社会部、東京本社政治部・外信部を経てロンドン支局長を務めた。現在、ロンドンを拠点に取材・執筆を行う。著書に『見えない世界戦争:「サイバー戦」最新報告』『EU崩壊』(ともに新潮新書)がある。

ジャーナリスト 木村正人=答える人 AP/AFLO=写真
1
nextpage

ボーナスは66億円、それでも赤字で無税

フェイスブック(FB)の英国法人の納めた法人税が、昨年度わずか4327ポンド(約80万円)だったことが、今年10月、英国で大きなニュースになった。

写真=AP/AFLO

FBの英国法人は昨年度2850万ポンド(約53億円)の営業赤字だった。だが従業員362人に総額3540万ポンド(約66億円)のボーナスを支払っている。英国の労働者の平均年収は2万6500ポンド(約493万円)。所得税や社会保険料の納付額は5392ポンド(約100万円)である。全世界で29億ドル(約3575億円)の利益を計上したFB社の法人税が、平均的な労働者の所得税や社会保険料よりも少ないとは常識では考えられない。

18世紀に米国が英国と戦った独立戦争は「代表なくして課税なし」がスローガンだったが、今や、米国の多国籍企業はさまざまな租税回避スキームを使って常識離れした税逃れを日常的に行っている。

これに対応して英国は今年4月から、迂回利益税、いわゆる「グーグル税」を導入した。これはグーグル1社を対象にした税制ではない。グーグルのような多国籍企業の租税回避に網をかけるものだ。経済のグローバル化とインターネットの普及で、売上高・資産・収益・雇用の海外比率が高い多国籍企業が増えた。その結果、タックスヘイブン(租税回避地)や低税率国に利益を移して納税を極限まで抑えて企業利益を最大化させるビジネスモデルが編み出された。英国の「グーグル税」は、企業活動の実体を欠いた租税回避に対し、通常の法人税率20%より高い25%を課すものだ。英財務相オズボーンは「応分の法人税を納めない企業に対する英国の寛大さはこれで終わりにしよう」と宣言した。

PickUp