ちょっとした一言や仕草が顧客に不快な思いを与えている。一流の営業マンと三流の営業マンの行動を比較することで、数字に直結するマナーのポイントを探っていく。

数多くの企業の営業研修に招かれて、現場の実態をつぶさに見てきた営業セミナー講師の加賀田晃さんは、住宅・リフォーム業界の現場におけるダメなお詫びの事例について次のように語ってくれた。

「新築だというのに雨漏りがしている、立てつけが悪くてドアが開かない、押し入れの結露がひどくてカビが生えてきたなど、お客さまからクレームの電話が日常茶飯事のようにかかってきます。三流の人はそうしたときに『それはウチの責任かどうかわかりません。カビが生えたっていっても、ちゃんと換気をされていましたか?』といったりして、責任逃れをしようとします。非を認めてしまうと、自分たちの責任で修理しなくてはならないからです」

そんな加賀田さんは、すぐに顧客のところへ行ってお詫びすべきはお詫びすることが、担当した営業マンの責務だと考えている。ただし、明らかに自社に責任があるかどうか不明な段階で、全面的に非を認めてしまっていいものなのかどうか、悪質なクレーマーが跋扈している世の中になっているだけに、微妙な問題が残る。そこで、一流の人がワンランク進化させ、日々実践しているお詫びの作法を教えてくれたのがマナーコンサルタントの西出ひろ子さんだ。

「クレームの電話がかかってきたら、『お客さまをご不快な思いにしてしまいましたこと深くお詫び申し上げます』とお伝えします。ここで謝罪しているのは、クレームの内容についてではなく、あくまでも不快に思わせてしまったことに対してのことなのです。しかし、その一言でお客さまは『自分の不満を理解してくれた』と感じて、ほとんどの場合、お怒りの気持ちを静めていただけるようになります。そうなれば具体的なクレームの内容をきっちりお聞きして、的確な対応を取れるようになってきます」

そして、次に状況確認のステップに移るわけだが、ダイレクトに「一つ、お伺いしたいのですが」と切り出すと、丁寧な言葉であっても、顧客には“命令”としか聞こえない恐れがある。クレームをつけにきている顧客であればなおさら、火に油を注ぐようなことは是が非でも避けたいところだ。