今や米国に次ぐGDP世界第2位の経済大国・中国。最近は国連をはじめとする国際諸機関の要職も押さえ、自ら主導するアジアインフラ投資銀行にも、日米を除く先進国が雪崩を打って参加を表明した。

その巨大中国で頂点に立つのが習近平国家主席だ。習政権成立に至る過程では血みどろの権力闘争が繰り広げられた。政争は今も続いている。

峯村健司(みねむら・けんじ) 
朝日新聞国際報道部機動特派員。1974年、長野県生まれ。97年入社。大阪本社社会部などを経て2005年中国人民大学に留学。中国総局員、ハーバード大学フェアバンクセンター中国研究所客員研究員を経て14年より現職。

本書は、中国共産党内部に深々と分け入って、その複雑怪奇な力関係と暗闘を抉り出した力作だ。

著者は、2011年に優れた国際報道に送られるボーン・上田賞を受賞した気鋭の新聞記者。米ハーバード大で留学中の習近平の一人娘を探り当て、まず表に出ることのない中国共産党創設メンバーの子孫を直撃する取材力は圧巻で、地道な現場取材と率直な文体が読者を引きずり込む。

「習近平政権は、院政を敷いてきた江沢民と前トップである胡錦濤の激しい政争が結果的に生み出した産物です。ある程度は見逃される法輪功やチベット問題と違い、中国で最大のタブーは権力闘争に関すること。中国共産党に『権力闘争』という言葉は存在しないことになっています。出版後、再入国の前日は緊張で眠れませんでした」

筆者は本書のプロローグで、現場を歩き、そこで得た事実のみを記していることにわざわざ触れている。一見当たり前だが、情報統制の厳しいかの国でこれを貫くのはなかなか骨が折れそう。現場も当事者もない現実離れした中国論が巷に溢れる一因は、そこにあるようだ。

「一昨年の帰国時、旧知の官僚や知人から『中国は来年かな、崩壊は?』と紋切り型で聞かれ、違和感を覚えましたが、氾濫する“中国崩壊本”を見て謎が解けました。日中関係、尖閣問題には強い思い入れがありますから、日本の対中国インテリジェンスの欠如には危機感を覚えます」

その反動か、本書の一読後は現在の“反汚職キャンペーン”報道の見方が一変する。

「(政争の)本番はこれからです。第2ステージは経済人、標的は国有企業の幹部たち。中国は“政経一致”の国。日本の経済人にも、ぜひ読んでいただきたいと思います」

日中間の政治と経済は、もはや不可分の関係にある。習政権の政治的基盤や権力構造のメカニズムを知るうえで、貴重な一冊となろう。