です・ます調で書かれた、平易に読める新書である。親しみやすい時事的なトピックも扱われている。なによりも著者の三浦さん自身、ソフトな物腰の若い女性だ。しかし構成や論点は明快で、論調はときに挑発的。
冒頭で「この本を貫く考え方」を宣言する。それは「コンパッション」であるという。
「哀れみ、思いやり、同情と訳されたり、共感という使われ方もしたりするようですが、日本語訳するとちょっとニュアンスが違います。(略)寄り添って同情するだけではなく、そのうえで、もう少し大きな全体最適に向けて考えるというか。実践しようとすると、共感というより、もう少し激しくて熱いものです」(「1 不毛な左右対立を超えて」)
そう思うのは、課題解決に向けて実りある議論をしようとしない政治論壇への違和感、もっというなら憤りの感情があるからだ。「いろんなものを二項対立に当てはめて、反対陣営を悪しざまにいう姿勢そのものに抵抗感があります」(同)と三浦さんは書く。
若手経済人を中心に政治家、識者らが集まる恒例のG1サミットで、今年、リーダーたちの共通認識となったのが「明治維新に匹敵する変革が起きている」ということだ。少子高齢化や財政危機を背景に農業、雇用などの改革が進む。久しぶりの本格政権下で国内政治は安定したが、米国の存在感が薄れるなかで東アジアを含む世界情勢は大きく流動化、きわめて危険な状況にある。
にもかかわらず、左右両陣営が互いの悪口をいって、溜飲を下げているだけなのが日本の政治論壇の現状である。それでいいのか、という思いは若い世代を中心に広く共有されている。1980年生まれの三浦さんは、そんな声なき声の代弁者でもある。
一部、具体的な提言にも踏み込んでいる。たとえば、政権への対抗勢力が取り組むべきは「地方、女性、非正規」の問題だという。解決のためには、リベラル派がタブーとする金銭解雇の導入も検討すべきではないかと提案する。
ただし、「こうでなければいけない、とは私はいいません。あくまでも『こう思います』ということを書きました」。
柔らかな口調で、きっぱりという。決して押しつけない。しかし、徐々に説得される心地がする。本書の内容も、多くの人の共感を集めるに違いない。