サノケン、明大大学院教授……は自業自得か

このところ功成り名遂げた有名人の「失脚」が話題になっている。

1人は、東京五輪のエンブレムデザインが盗作疑惑で白紙撤回されたサノケンことアートディレクター・佐野研二郎氏。もう1人は、司法試験問題を教え子の女子学生に漏らし、明治大学法科大学院を懲戒免職となった青柳幸一元教授だ。

青柳元教授は動機について「女性に好意があった」と述べているらしい。だが、司法試験問題を作成する考査委員を務めていたことから国家公務員法違反容疑で東京地検に告発された。名声や社会的地位も失墜するなどその代償は大きかった。

得意の絶頂から失脚するのはこうした有名人に限らない。

▼サラリーマンにも多い失脚組

サラリーマンの世界ではよくあることだ。もちろん、不祥事や社会的犯罪を起こして失脚する人もいるが、本人は比較的真面目にやっているつもりでも、突然失脚する場合も珍しくない。どこかに油断やスキがあるからなのか、もしくは誰かの策略か陰謀なのか。

出世レースは入社後に皆一斉にスタートするが、30歳前後になると、先頭を走るグループと中位・下位グループに大きく分かれてくる。この時点で下位グループから先頭に立つのはほぼ不可能だが、サラリーマン人生は残り30年もある。

その間に先頭グループから脱落する人もいれば、中位グループから這い上がってくる人、さらに抜かれる人もいる。会社の業績悪化や合併などのM&Aが発生すれば、下位グループの人たちはリストラの憂き目にもあうこともある。

一例を挙げよう。

大手重電メーカーの課長職のA氏は45歳。慶応大学経済学部を卒業し、入社後に半導体事業部門の営業職に配属。同期の中では若くして頭角を現し、20代後半に社内の選抜留学試験に合格し、アメリカのアイビーリーグの大学のビジネススクールに留学し、MBAを取得。帰国後も事業部門のエースとして活躍した。

プライベートでは中央官庁の元事務次官の娘と結婚。30代半ばに同期のトップで課長に昇進し、周囲からは会社を背負って立つ将来の経営幹部候補として嘱望されていた。出世街道をまっしぐらに進むかに思えたA氏だが、45歳のときに会社の業績不振による事業構造改革の最中に退職勧奨を受けた。

面接を担当した人事担当者はA氏と同期入社だった。人事担当者はそのときの様子をこう語る。

「上司に戦力外通告を受けた後の人事部面接だったので相当落ち込んでいました。同期とはいっても400人いましたから私のことは忘れているだろうと思っていたのですが、覚えていました。そして『あなたと私は同期ですよね。それが僕は会社に辞めさせられて、あなたは切る側、皮肉なものですね』と言うのです。一瞬、返す言葉もありませんでした」