事実上のルール無視。水面下で早々に就活を始め、冷酷な仕打ちをする企業に振り回され、疲労困憊の学生たちがひねり出した復讐術とは――。

昨夏開始のインターンは事実上の就活だった

大企業の内定出しが8月末でほぼ終わり、就活戦線は後半戦に入っている。それにしても今年ほど学生を疑心暗鬼に陥れた就活はなかったのではないか。流れをざっと振り返ってみよう。

事の発端は2013年4月の安倍晋三首相の要請だ。経団連、経済同友会、日本商工会議所の代表に「採用広報は大学3年生の3月から、採用選考は4年生の8月から」にそれぞれ後ろ倒しするよう伝達。

これを受けて経団連は同年9月に「採用選考に関する指針」を発表。2016年度入社以降の採用選考活動を8月1日以降とする後ろ倒しを加盟企業に要請した。

就活時期の後ろ倒し実施は、もともと大学関係者から就職活動の早期化で学業を阻害するという批判を踏まえたものだ。そして安倍首相は早期化自粛を成長戦略(日本再興戦略)にまで盛り込んでいた。

だが、経団連の指針の実効性については当初から疑念が持たれていた。従来は経団連の「倫理憲章」の規約に賛同した会員企業が誓約書に署名する形で規制されてきた。署名したのは加盟企業1300社のうち700社である。

会員企業すべてが対象となる「指針」という形は評価できるものの、なぜ従来の形の「署名」ではなく、しばりが若干緩そうな印象を受ける「指針」なのか、経団連の“本気度”が疑われていた。

▼水面下で次々に内定を出す企業

政府や経団連は8月の1カ月間で選考が終わり、後は学業に専念できるだろうという甘い見通しを持っていたのかもしれないが、現実はそれに逆行する超長期化の様相を呈した。

昨年8月のインターンシップを皮切りに事実上の選考活動はスタートした。

後ろ倒しになったことで前半が暇になり、少しでも採用に結びつけようと多くの企業が実施した。経団連に加盟していない企業の一部は、最初から指針や政府の方針を守る気などなく、外資系企業やIT業界、マスコミ、広告代理店などは昨年の10月から今年3月にかけて次々と内定を出していった。

また、例年なら大企業の選考後に採用活動を本格化させる中堅・中小企業も引きずられるように1~2月以降に採用活動を開始した。