専門学校卒、内定ゼロでフリーターに
「高学歴だったら、もっと楽に前に進むことができたのかもしれませんね。だけど、20代前半で会社を設立し、人を雇うなんてできなかったと思います。セミナー研修の講師として、今のポジションをつかむことも難しかったんじゃないかな」
人材戦略コンサルタントの柘植智幸氏(38)が、社会人として20年近いキャリアを振り返る。人材コンサルティング会社・じんざい社の代表取締役として、企業の採用・定着・育成などのコンサルティングを手掛ける。
企業や経済団体、自治体などのセミナー研修の講師としては、トップランクの人気だ。年間250回を超えるという。首都圏を中心に、関西、中部、北海道、九州など全国を飛び回る。
柘植氏は、就職氷河期世代である。1998年に、大阪ビジネスカレッジ専門学校を卒業した。在学中、40社ほどの会社の採用試験を受けたが、内定を得ることができなかった。山一証券が経営破たんするなど、金融危機の頃だった。
卒業後は、フリーターとしてピザ・カリフォルニアで配達を始めた。一方で、友人や後輩などを率いて独自のビジネスを手掛けようとした。
とはいえ、売るものがない。そこで、大学の就職部に出向き、専門学校で教わった講師の講義を売り込んだ。「この先生の話をぜひ、貴大学の学生にも聞いてほしい」。在学中、講師の講義に魅力を感じていた。講師も柘植氏の提案を受け入れ、支援をしてくれた。
だが、大学からは断りを受け続けた。この頃、収入はゼロ。フリーターはすでに辞めていた。
「仕事がなく、お金がないことがこんなに苦しいのか、と身に沁みました。本当に惨めで、不公平で、理不尽な思いをすることがよくわかりましたね」