“健康体”を保つのが創業経営者の感覚であり役割

日本電産は40周年を期して、14年春に川崎市に300人規模の基礎研究所を開設する。この研究所も同様にグループで活用することを前提にしている。

今年の7月27日、創業40周年を記念し、京都の本社で500人超の社員・家族がイベントに参加した。5時間ほど、永守氏は希望する社員全員と記念撮影に応じた。滋賀、長野の同社技術開発センターでも、同様のイベントを行い、親睦を深めた。

連邦型の利点は、それぞれの会社に大きな権限があるから、経営陣のやる気を引き出しやすいことである。しかし05年ころを境に、世界のマーケット事情は変わってしまった。私の見立てでは、部品メーカーでは年商1000億円、装置メーカーなら年商500億円を下限に、それより小さな会社は単独では生き残れない時代になったのだ。

ただし、一体型経営はあくまでも当面の最適解にすぎず、時期が来れば、そのときの条件に合わせて別の形をとるはずだ。50周年を迎える23年には経営の「四本柱」がそれぞれ成長するので、本社がグループを一つに束ねるスタイルから、たとえば世界3極に統括本部を置く仕組みへ移行しているだろう。

新しい分野への挑戦も、次のような段階を踏んで進めるつもりだ。

「100年後も成長している会社」になるには、成長性は低くても時代の変遷に左右されない安定的な事業を確保したい。たとえば社会インフラ系の事業だが、この分野は他の商品と比べて投資額が大きい。そこで営業利益1000億円を目安に参入すると決め、利益の目途がついたので受注活動を始めている。

一方、低収益でも乗り出したい分野がある。BtoC、すなわち一般向けの最終商品である。

日本電産はいまBtoBのビジネスで売上高1兆円を射程にとらえている。ただ、部品メーカーのままでは2兆~3兆円が上限だ。この先10兆円企業を目指すなら、いずれはBtoCに挑戦しなければならないだろう。

営業利益率5%未満と、決してもうかる事業ではない。しかし、一般向けの商品を扱えば会社の知名度が上がり、従業員のモチベーションが高まるといった効果がある。こうした要素を総合的に勘案し、営業利益が2000億円に達したところで本格参入するつもりである。