2015年9月1日(火)

「不完全」への投資価値 ~カリスマファンドマネージャーと語る(後編)

“マネジメント”からの逃走 第32回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
若新 雄純 わかしん・ゆうじゅん
人材・組織開発プロデューサー/慶應義塾大学特任講師

若新 雄純福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。
若新ワールド
http://wakashin.com/

執筆記事一覧

藤野英人、若新雄純=談、前田はるみ=構成
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レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者の藤野英人氏との対談後編。「働くこと」の本質を語り合った前編(http://president.jp/articles/-/15988)に続き、後編では、多様な人たちの価値を最大限に生かす組織やコミュニティのあり方について意見を交わした。

マイノリティが持つ価値

【藤野】企業や組織を語るときに、会社の規模や知名度で価値を判断する人が多いようですが、投資の世界では、どの会社もフラットに見ます。なぜなら、投資はつねに「未来志向」だからです。規模や知名度は過去に対する評価ですからね、過去は投資には関係ありません。

【若新】未来を評価する、というのは、大切ですが難しいことですね。

【藤野】僕らは投資対象のことを、専門用語で「ユニバース」と呼びます。つまり「宇宙」です。日本には約3600社もの上場企業があり、それ自体が宇宙を形成していると考えます。投資する人はもっと多く、それぞれ異なる視点を持っています。たとえば、長期投資を好む人もいれば、短期投資こそすべてと考える人もいるし、日本人投資家もいれば外国人投資家もいる。つまり、投資家もユニバースなんです。

さらに、個人のなかにも愛情や憎しみ、エゴ、社会性などさまざまな感情や気質が共存し、ユニバースを形成している。こうしたマイクロユニバースが無数に集まり、統制が効かないのが投資の世界です。けれども、ユニバースが集まれば集まるほど、全体としては知性が増す。いわゆる“神の見えざる手”が働く。ここが投資の面白いところでもあるし、こういった“宇宙観”がすごく大事だと思っています。

【若新】同感ですね。藤野さんが「ユニバース」と呼んでいるものは、僕が「カオス」と呼ぶものと表裏一体ですね。カオスがおもしろいのは、混沌の中に、そこにしかない秩序が新しく生まれたりもすることです。NEET株式会社がまさにそうで、メンバー同士が激しくぶつかり喧嘩しながら、彼らなりの秩序を生み出しつつあります。またすぐに壊れますけど……(笑)。彼らを見ていると、カオスの中にこれまでにない新しい秩序を見出せるかどうかが、人間の歴史の醍醐味のような気がしています。

【藤野】投資はユニバースだと言いましたが、たとえば投資信託を組成する場合、3600社の日本株のうち、どの会社を選んでもいいし何社選んでもいい。その比率も自由です。私が運営しているのは、日本の成長企業へ投資するファンドですが、その中には大企業もあれば小さな会社もあるし、経営者が辣腕をふるう会社もあれば、そうでない会社もある。とにかく“ぐちゃ”っと見えるんです。これについてライバルのファンドマネージャーがよく言うのは、「ファンドの顔が見えない」「何を目指しているのかよくわからない」と。

【若新】そういうことを、わざわざ明確にしたがる人が多いですよね。僕もよく聞かれます。「若新さん、このプロジェクトのゴールは何ですか?」って。僕が実験的なプロジェクトで目指すのは、ゴールではなく、「変化そのもの」です。変化を積み重ねていけば、僕たちは何かしらの結果を生むことができると考えています。同様に、投資家がはじめからゴールの見えているものに投資するのも、つまらない話ですよね。

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