2015年8月19日(水)

「英語落語」が教える“日本人の英語”の問題点

三宅義和・イーオン社長とゆかいな仲間たち【第5回 桂かい枝師匠 前編】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
三宅 義和 みやけ・よしかず
株式会社イーオン代表取締役社長

三宅 義和1951年、岡山県生まれ。大阪大学法学部卒業。85年イーオン入社。人事、社員研修、企業研修などに携わる。その後、教育企画部長、総務部長、イーオン・イースト・ジャパン社長を経て、2014年イーオン社長就任。一般社団法人全国外国語教育振興協会元理事、NPO法人小学校英語指導者認定協議会理事。趣味は、読書、英語音読、ピアノ、合氣道。

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三宅義和・イーオン社長 構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴
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落語には独特の時間の流れがある

【三宅義和・イーオン社長】今回は、落語家の桂かい枝師匠にお話をおうかがいします。かい枝師匠は、日本の伝統芸能である落語を世界に広めるべく、海外で何度も公演されています。日本の笑いを世界に発信するという非常にユニークな取り組みをされています。私自身も師匠の英語落語を何度か聴かせていただきました。

【桂かい枝師匠】いつも応援していただき、ありがとうございます。

【三宅】聴かせていただくたびに強く感じるのが、師匠の英語落語が、その都度パワーアップしていることです。今回は、その秘密もぜひおうかがいしたいと思います。一方、英語学習、さらにグローバル時代における日本人の英語という観点からも深い示唆を与えていただけると思っています。かい枝師匠は生まれも育ちも関西でいらっしゃいますけれども、大学は群馬の高崎経済大学。そもそも、どうして落語家になろうと思われたのですか。

三宅義和・イーオン社長

【かい枝】初めて関西という土地を離れて大学生時代を過ごしました。それまでずっと関西という文化のなかで育っていたのですが、関西はユーモアが日常のなかにあります。駅のポスターでも、東京は「痴漢は犯罪、絶対ダメ」ですが、大阪は「ちかん・あかん」とか(笑)。

地元では、あまり意識することはなかったんですけれども、関東の人たちと触れ合うなかで「あっ、意外に自分はユーモア好きなんだな」ということに気づきました。それで、そういう方面に興味を持ったというのがきっかけですね。

【三宅】それは大学何年の時ですか。

【かい枝】大学3年生になって、初めて将来を考えたときに、自分の好きなことを職業にしたいなと思いました。それは人を楽しませることだという結論に行き着きました。それで落語家という職業を選びましたが、本当に、ようこんな気楽な仕事があったなと思いますね(笑)。

【三宅】まさか、気楽ということはないでしょうが。

【かい枝】いや、世の中の仕事って、どんな仕事でも最終的に人の役に立つわけですけれど、僕らはしゃべって、お客さんが喜んでくれる姿、人の役に立っているのが目の前で見えるので、もうこんなにありがたい仕事はない。でも逆に言うと、こんなに恐ろしい仕事もないですよね。役に立ってないのがリアルにわかる仕事でもありますからね。

【三宅】落語の魅力というのは何でしょうか。

【かい枝】そうですね、やっぱりこれだけ情報過多というか、もういろんな楽しみがあるなかで、言葉を投げかけて、それだけを聴いて、想像して、話を楽しむというところかもしれません。いまどき着物で登場して、何をするのかと思ったら、座布団にどっかり座って、動くわけでもない(笑)。

あんまり現代に合わないようなテーマだけれども、やっぱり落語には独特の時間の流れがあります。例えば、「ちょっとお昼前に寄らせてもらいまっさ」みたいなことを言うと、まあ「お昼前」ってすごく時間の幅が広い。落語の世界なら、朝から12時ぐらいまでを昼前です。いまの時代はかなりせわしない。「あぁ、5分遅れた」っていう世の中なのに、わりとゆったりした時の流れを感じられる演芸っていうのは、みんな安心するんですかね。

【三宅】なるほど、この忙しい、せわしない世の中のなかで、落語を聴いているときはホッとしていられる。

【かい枝】それと、日常生活で他人と一緒に笑うということなんて、まずないじゃないですか。知らない人同士が寄席という空間で「ハハハッ」と笑い、同じ感覚を共有する。その感動というか、その一体感に醍醐味があるのかもしれません。これだけ人間関係が希薄になっているなかで、一体化するということは、とても不思議な芸ですね。

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