2015年7月25日(土)

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計画犯の孫が小説で事件を再現

戦後最大の未解決事件を問われて、下山事件を挙げる人は少なくないだろう。国鉄の初代総裁である下山定則氏が、就任間もない昭和24年7月6日未明、都内の常磐線の線路上で轢死体となって発見された事件である。

『下山事件 暗殺者たちの夏』柴田哲孝著 祥伝社

失踪直前の下山総裁の不審な言動、遺体の不自然な状況。事実関係が明るみに出るほどに不可解さが増す事件であり、戦後推理小説界の重鎮である松本清張がGHQの謀略説を唱えたのも知られるところだ。下山事件については何人ものジャーナリストが取り上げてきたが、その中にあって本書は類書と一線を画している。下山事件の計画犯とされる人物の孫が著したものだからだ。

下山総裁の死因については、捜査を担当した警視庁捜査一課、二課が自殺説と他殺説で見解が分かれ、法医学者間でも死後轢断と生体轢断という真っ向からの対立が見られた。そして、突然捜査は打ち切られる。あたかも、何者かの圧力がかかったように……。この幕引きによって、下山事件の謎は一段と深まることになった。

下山事件が発生した昭和24年当時、GHQの対日占領政策は大きな転換期に差し掛かっていた。この年、中華人民共和国の誕生、ソ連の原爆実験成功を受け、反共の拠点として日本の重要度がにわかに高まった。日本の弱体化から経済力強化へと180度転換。初代総裁に就任した下山総裁の最大の任務は9万5000人規模の解雇の実施であり、「クビ切り」のための暫定政権との見方も有力だったが、あるプロジェクトへの反対姿勢を崩さなかったことで利害関係者にとって排除すべき対象となった。

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