円安、原材料費高、人手不足、消費税アップ……、値上げは不可避だが、できずに苦しんでいる企業も多い。
1回のセミナー受講料は100万円を超えるというカリスママーケッターが講義をプレジデント誌に大公開! 値上げの極意を語ってくれた。

Q. 従来の顧客を捨てるリスクを取ってもよいものでしょうか?

従来の自社ブランドとは別にプレミアム・ブランドの製造販売を始めたところ、かなりの売り上げをあげています。会社としては、人的リソースの問題もあり、プレミアム・ブランドに一本化しようという話も出ているのですが、従来の顧客を完全に捨てるリスクを取っていいものか悩んでいます。(アパレル業)

私はコンサルタントとして470もの違う業界に携わりました。共通して言えることは、ターゲットを絞ることの大切さです。例えば、2000年に日本マクドナルドがハンバーガーを半額で提供し始めました。それによって、若者の文化であったハンバーガーが、ビジネス世代にも浸透しました。しかし、同社の経営がその後、必ずしもうまくいっているわけではありません。市場全体に愛されるのはとても難しいのです。

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「好かれず嫌われず」から脱却せよ

二極化していくことは避けられないことであり、恐れていてはいけないのです。熱狂的なファンになってもらえれば、値上げがあったとしても、必ず残ってくれます。

大好きと大嫌いの真ん中、許容範囲の枠が最悪なのです。別の会社が新製品を出したり、少し安い商品を見つけたときにすぐに移ってしまいます。大好き、もしくは大嫌いというふうに消費者の意見が分かれるような会社を目指すべきだし、そういう商品・サービスの提供に努めるべきです。

ジェイ・エイブラハム
1949年生まれ。米国のトップマーケティングコンサルタントで、世界中の経営者から業績向上のアドバイザーとして、絶大なる人気を誇る。IBM、シティバンク、マイクロソフトなど1万2000以上ものクライアントに対し、70億ドル(約7000億円)もの売り上げ向上をもたらしたと言われる。1回のセミナー受講料は100万円を超えることも。著書に『ハイパワー・マーケティング』などがある。
(唐仁原俊博=構成 尾関裕士=撮影)
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