Q. やる気のない上司を奮起させるにはどうしたらいいですか?

同世代の同僚たちと人材活用に関する勉強会を始めました。最近では私より下の世代の参加人数も増えてきて、会社全体としてはモチベーションが上がっているのを実感しています。しかし、われわれより上の世代にはどうも熱意が伝わらないらしく、冷めた目で見ているようです。値上げにともない、ますます競争が厳しくなる業界で生き残っていくためにも、彼らをうまく説得する方法はないでしょうか。(不動産流通業)
ジェイ・エイブラハム氏

かつてこれほどまでに人材が重要視される時代はありませんでした。グローバル化が進んでいく中で、市場の変化はより早く、より激しいものになっています。人材に頼るところが非常に大きいわけです。人材活用に注意を向けている質問者はすばらしい洞察力を持っているといえるでしょう。

09年に出されたMIT Sloan Management Reviewに、非常に興味深い調査結果があります。ほとんどの企業が人材の能力のうち20%しか使っていないというのです。実際、多くの企業を見てきた私の経験から言えば、98%の企業が人材の無駄遣いをしています。あなたの会社のCEOがその事実に気づき、受け止めることができれば、自分の部下に対しての考え方を変えることができるでしょう。

現代の企業に求められていることは、従業員の一番の強みを常に把握し、変化に応じて的確に組み合わせることができるか、ということです。人材を無駄遣いしている会社であれば、人材を育てて、100%の力を発揮できるようにすれば、実に5倍の能力を引き出せるわけです。

質問者の悩みは、上司に向けてたった一つ質問をすれば解決するはずです。「わが社が成功するためには2つ選択肢があります。今の人員では足りないので5倍の人を雇うか、既存の人員の能力をきちんと発揮させて生産性を5倍に高めるか。どちらかを選択してください」と。

ジェイ・エイブラハム
1949年生まれ。米国のトップマーケティングコンサルタントで、世界中の経営者から業績向上のアドバイザーとして、絶大なる人気を誇る。IBM、シティバンク、マイクロソフトなど1万2000以上ものクライアントに対し、70億ドル(約7000億円)もの売り上げ向上をもたらしたと言われる。1回のセミナー受講料は100万円を超えることも。著書に『ハイパワー・マーケティング』などがある。
(唐仁原俊博=構成 尾関裕士=撮影)
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