日本人の対外関係観を変える契機となりそうなISIL(IS)事件。当時、現地ヨルダン等で日本政府の動きを見聞した新右翼団体・一水会の木村三浩代表は怒りを隠さない。
「(湯川・後藤両氏の)遺骨が無理なら遺髪でもいい。遺品ひとつであっても、持って帰りたい」と木村代表。

私は3月中旬にヨルダンを再訪した。ISに殺害された後藤健二さんの遺骨を収容帰還させるためである。

すでに現地では、私が依頼したムーサ・アブドラ弁護士がISと交渉し始めている。日本政府は初めから、この問題にきちんと対応する意思も能力もなかった。だから私が乗り出したのだ。

きっかけはISが1月20日、オレンジ色の囚人服姿の湯川遥菜さんと後藤さんの動画を公開し、72時間以内に2億ドルの身代金を要求したことだった。それを見た私は、村上正邦氏(元参院議員)と自民党幹部に「すぐにアラビア語で対応し、日本の断固たる意思を示すべきだ」と訴えた。

自民党幹部はそれをすぐさま官邸に伝えてくれたが、官邸は動く様子が見えなかった。対策本部がある現地でも同様なので、私はヨルダンに行くことにした。知己を通じ、ムーサ・アブドラ弁護士を紹介してもらった。ムーサ弁護士は人質解放交渉で実績がある。

1月30日に東京をたった私は、翌31日にムーサ弁護士と面会。5日に帰国するまで、毎日のように議論した。その結果わかったのは、日本政府がISの動きを掴んでいないことだ。

湯川さんと後藤さんは、日本政府に棄てられたも同じ。菅義偉官房長官は「12月19日の時点で、後藤さんがISに拘束された事実を確認した」と述べたが、何もしていない。1月に安倍晋三首相がアラブを訪問し、エジプトで「ISがもたらす脅威を除去する」と支援を表明した。邦人2人が人質にとられていたのに危機感がなさすぎる。

日本政府のやり方は姑息だ。湯川さんはああいうキャラクターもあって、世間からの同情が少なかった。だが後藤さんの場合、『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』などの著書で戦場の現場の様子を伝え、平和の尊さを訴えていたことが知られると、世間から同情が集まった。慌てた菅長官は先手を打った。「テロリストと交渉しない」という「大義」で批判を封じ込めようとしたのだ。

家族への配慮も欠いている。後藤さんのお母さんである石堂順子さんだけでなく、湯川さんのお父さんにも官邸や外務省は電話一本すら寄こしていない。彼らは骨すら拾う価値のない厄介者なのか。これが税金を払ってきた国民に対する扱いだろうか。