欧米が主導する国際金融秩序が大きな曲がり角を迎えようとしている。中国が習近平国家主席の肝煎りで今年末の設立を見込むアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、アジアから欧州にかけたインフラ投資に大きな存在感を発揮しそうなためだ。3月31日に締め切った創設メンバーへの参加表明は約50カ国・地域を数え、米国、日本が最大出資国であるアジア開発銀行(ADB)の地位を脅かしかねない。

とりわけ日米を驚かせたのは、盟友の先進7カ国(G7)のうち欧州勢が雪崩を打って「中国版アジア開銀」になびいたことだ。3月はじめ、27カ国だった参加国は、英国が3月12日に参加表明したのを機に、ドイツ、フランス、イタリアの欧州勢が一斉に参加表明。オーストラリア、韓国、台湾の親米の国・地域にもドミノ現象を引き起こすなど、日米は寝首を掻かれたも同然で、アジアと欧州を結ぶ市場に中国主導による新たな経済圏が形成される可能性が高まってきた。

日本政府は同盟国の米国への配慮やAIIBの運営に対する不透明さなどを挙げ、参加表明を見送る姿勢を示してきた。それだけに想定外の事態に情報収集力不足を露呈してしまった。

欧州勢は、中国が最大の貿易相手国であり、AIIBの存在は無視できないとの判断を優先した。習国家主席がアジア、欧州を結ぶ400億ドル(約4兆8000億円)の「シルクロード経済圏構想」を併せて打ち出したとあれば、その判断はなおさらだ。

一方、米国は議会で多数派の野党、共和党の反対でオバマ政権はADBなど国際金融機関への出資拡大に身動きがとれない。日本は米国の顔色をうかがうしかなく、成長戦略の「日の丸インフラ輸出」に暗雲が垂れ込みかねない。これには経済界も動揺は隠せず、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は「AIIBに参加しないことでインフラビジネスが不利になることだけは避けてほしい。ADB以外にセカンドの選択肢があってもおかしくない」と、複眼的思考に欠ける政府対応を懸念する。5月に訪米する安倍晋三首相は、オバマ大統領との会談で今後の方向性を探るとみられ、AIIBへの参加の是非に決断を迫られる。