働き方を根本的に変える法案の中身

今の通常国会にサラリーマンの働き方を根本的に変える法案が国会に提出される。それは「高度プロフェッショナル制度」の創設、いわゆる「残業代ゼロ」法案と「企画業務型裁量労働制」対象者の大幅拡大の2つ、だ。

制度設計を検討してきた厚生労働省の労働政策審議会が2月末に法律案要綱を厚労大臣に提出し、閣議決定を経て、「労働基準法改正案」として国会に提出されることになる。

「残業代ゼロ」法案はアメリカのホワイトカラー・エグゼンプション(以下、エグゼンプション)の日本版だ。一定のホワイトカラー労働者を対象に、法律で定めている休憩・休息時間の付与、深夜労働、日曜・祝日労働などに関する労働時間規制の適用を外すものだ。つまり、現行の1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えた場合に支払われる25%以上の割増賃金を会社が支払わなくてもよくなる制度だ。

07年1月に第1次安倍政権で世論の反発を受けて廃案になった。もはや二度と日の目を見ることがないだろうと思われていたが、2014年6月、アベノミクスの第3の矢である成長戦略(日本再興戦略改訂2014)の労働規制改革の目玉として新たに装いを変えて突然浮上した。安倍晋三首相にとってはまさにリベンジの産物である。

筆者は第1次安倍政権下でのエグゼンプション導入の動きを取材し、さらに今回の導入を画策した経済界・政府の動きや厚労省の審議会のほとんどを傍聴してきた。その中で浮かび上がる経営者の狙いと今後サラリーマンにどんな影響を与えるのかをまとめた本を出版した(『2016年残業代がゼロになる』光文社)。

この法案が国会で成立すれば、具体的な施行は2016年4月1日になる。ということは、導入企業はそれまでに就業規則の見直しや対象者の選定、労使協議などの準備作業を終えて、実施に踏み切ることになる。エグゼンプションに関心があるかないかに関係なく、多くのサラリーマンが当事者となる。