2015年2月24日(火)

「無意識に実践できるまで」弛まぬ革新の土壌を築いた理念経営 ~アイ・ケイ・ケイ編

「理念」経営で難所は乗り切れる 第8回 「アイ・ケイ・ケイ」(4)

PRESIDENT Online スペシャル

著者
竹内 秀太郎 たけうち・しゅうたろう
グロービス経営大学院主席研究員

竹内 秀太郎東京都出身。一橋大学社会学部卒業。London Business School ADP修了。外資系石油会社にて、人事部、財務部、経営企画部等で、経営管理業務を幅広く経験。日本経済研究センターにて、世界経済長期予測プロジェクトに参画。グロービスでは、人材開発・組織変革コンサルタント、部門経営管理統括リーダーを経て、現在ファカルティ本部で研究、教育活動に従事。リーダーシップ領域の講師として、年間のべ1000名超のビジネスリーダーとのセッションに関与している。Center for Creative Leadership認定360 Feedback Facilitator。共著書に『MBA人材マネジメント』『新版グロービスMBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。

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竹内秀太郎=文
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佐賀から九州そして全国へと展開し、東証一部上場を果たしたアイ・ケイ・ケイ。これまで見てきた通り、その成長の根底には理念経営があった。
規模を追求する競合がひしめく大都市を避け、長期的に勝算が見込める場所に進出先を厳選。それぞれの地域特有の顧客ニーズに細やかに対応できるよう、理念の共有を通じて、顧客フロントの営業やサービス職の人間だけでなく、職人気質の強い調理や衣裳といった専門スタッフを含めた協力連携を促した。また理念を語る役割を与え、経営者として育成した人財に、社長の分身として進出先の拠点のマネジメントを任せていった。
今回は本事例の総括として、同社からの学びのポイントを、特に理念の浸透の秘訣という観点から整理してみたい。

理念は半歩先が丁度いい

理念を掲げている会社は多数存在するが、ビジネスとして売上利益が継続的にあがってこそ持続成長できる企業として評価される。いかにして理念を業績に繋げられるか。「はじめから確信があったわけではない」とアイ・ケイ・ケイの金子和斗志社長はインタビューで話していたが、ここまでは上場企業になるまでに理念と業績の連動を実現してきた。理念だけが先に行き過ぎても絵空事になってしまい、理念が浸透しないまま成長軌道に乗ると売上至上主義になりかねない。「理念は半歩先が丁度いい」(金子社長)というバランスで、理念と業績を両立させているところは、同社の経営から学ぶ点として見逃せない。

一般にサービス業においては、理念が機能していると従業員のモチベーションを高め、それが高い顧客満足度を実現し、売上の拡大に結び付くとされる。さらに売上増が従業員の報酬や労働環境の改善に還元されれば、それにより一層のロイヤリティとモチベーションが従業員から引き出され、顧客サービスの向上へと繋がっていく。いわゆる顧客満足度(CS: Customer Satisfaction)と従業員満足度(ES: Employee Satisfaction)の好循環が生まれるのだ。経営学の世界では、このような考え方を「サティスファクション・ミラー」と呼ぶ。

実際、アイ・ケイ・ケイは、顧客満足度日本一をビジョンとして掲げており、ESも極めて高い水準にある。今回の取材で数多くの社員の方々に接する機会があったが、驚いたのは、インタビューした全員が異口同音に「上司を尊敬し、同僚や部下を信頼している」と話してくれたことだ。前々回に触れた通り、理念の共有や勉強会での対話を通じ相互信頼の土壌ができており、一般の会社で見られるような上司や同僚に対する不満、内向きのストレスが極小化されている。同社では「自分以外はすべてお客さま」と理念に定められていることが実践されている証といえよう。

こうした相互信頼の文化は、外部機関のサーベイでも高く評価されている。Great Place to Work(R) Institute Japanが実施している2015年「働きがいのある会社」調査において、アイ・ケイ・ケイは従業員100〜999名の企業カテゴリーで第7位にランクされたのも、同社のESの高さを反映したものだ。

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