職人の技術を残し継承していくためにも、生産量に限りはありますが、売り上げにはこだわらなければなりません。モノづくりだけでなく、どうやって商品の魅力を伝えるかを考えるのも私の仕事です。たとえば、ラインアップ。私が入社する10年まで、年間80個しか売り上げていなくとも、生産し続けている商品もありました。そうした状況とアイテムを絞ったほうが品質や生産性は上がるという考えのもと、半分以上を廃番にしました。

製品の良さを伝えるために、カタログやホームページも一新。いかに製品に自信があったとしても、誰もが写真1枚で魅力を感じ取れるわけではない。工場内の製造過程を動画で公開する、製品写真や説明文を充実させるなど、お客様に届くように説明を充実させていきました。

一方でギフト用の木箱やその書体などは、当初からほぼ変えていません。この会社が代々積み重ねてきたことを、すべて否定したくはない。この先、オンボロの工場を建て直すことだってできる。でも、それこそが味であり、いくらお金があっても手に入らない財産なのです。

“番頭”の活躍で売り上げ3.5倍に!

1989年に誕生。ビールから日本酒、ワイン用など、全39種類を展開。ビールグラスは、ビール会社のCMでも数多く使われている。齊藤氏が同社のコンサルティングを始めた2006年度に比べ、13年度の売り上げ約3.5倍、販売個数約2.5倍。うすはり(同社登録商標)の「はり」は、ガラスを意味する。

齊藤能史(松徳硝子 専務取締役・クリエイティブディレクター)
1976年、北海道出身。広告制作会社、メーカーを経て、2010年に松徳硝子入社。同社の村松邦男社長と知り合ったことをきっかけに、06年よりボランティアでコンサルティングに携わる。デザイナーとして商品企画、開発をするほか、経営企画から、ブランディングまでを手がける。
(構成=矢倉比呂 撮影=佐藤新也)
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