――なぜ会議や根回しは時間がかかるんでしょうか?

たしかに時間がかかりますね。でも覚えておいてほしいのは、根回しが必要となるような大きな仕事であればあるほど、その幹の部分(大事な部分)に対して反対意見を言える勇気のある人は、実は少ないということです。

――じゃあなぜ時間がかかるんですか?

自分の存在感を示したいがために、枝葉末節に口を出す人が出てくるからです。世の中を見てもそうでしょう。総論賛成、各論反対ばかりで、各論に入るとみんながエゴを言い出す。

僕も仕事で根回しはよくやっていましたが、いつもそうでした。丁寧に説明すればするほど反対意見が出てくる。それをいちいち聞いて取り入れていると、最初のプランが「熱海の温泉旅館」のようになってしまう。建て増しに次ぐ建て増しで、複雑怪奇な構造になってしまうということです。

――うまく乗り切る方法はありませんか?

大切なのは、説明する際、「今回のプランの幹をご説明します。2つあります」と、まず重要な部分を丁寧に説明するように心がけることです。一方、枝葉部分は「最後に細かいことですが」と簡単に説明する。そうすれば、「意見を言うなら幹の部分についてきちんと意見を持ってからにしよう」という空気になりやすい。

――なるほど。でもそもそも、根回しって意味があるんでしょうか。

しなくて済むなら、それに越したことはないですね。根回しのリスクは2つあります。一つは時間を浪費すること。もう一つは、枝葉の意見も1つくらいは取り入れなければならないため、原案が陳腐化することです。

だから、「もう根回しはしない」と割り切って、本当に関係のある人たちだけできちんと数字・ファクト・ロジックで議論をし、正しいことを決めていくのが本来は理想です。意思決定は必要最小限のメンバーでやるのが一番効率的なのです。「船頭多くして船山に登る」という言葉があるように、指示する人が多いと物事がまとまらないばかりか、とんでもない方向へ流れていく恐れもあるからです。

――思い切って、根回しをなくしてしまうというのはどうでしょう?

もし、そうするなら、力があって信頼できる上司の下で、その上司と十分にコミュニケーションを取りつつ進めるべきですね。「時間も惜しいし、この案でいきたいので、根回しはしませんけれど、雑音が出たらバシッと守ってくださいね」と頼んでおきます。会議の席で「おい、○○君、○○部長にちゃんと事前に相談してなかったのか」とか言われたら、目も当てられませんから。

Answer:大事な部分と、そうでない部分を分けて説明することが大切です。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。