「毎年、冬に眠たくなる」 事務職Aさん(42歳女性)

冬になってから1カ月で3kg太ったAさん。
「ついお菓子を食べてしまう。1日中眠い。理由はないのに気持ちがダウンしてもの悲しい。思い返せば昨冬もつらかった」

元来明るい性格のAさんだが、秋口から気持ちが落ち込んでいた。食事以外にチョコレートや菓子パンが無性に食べたくなり、「私、冬眠しちゃうのかしら」と冗談を言いつつ、表情は困惑気味だった。Aさんは、季節性気分障害の1つである冬季うつ病と診断されたが、その年の春の訪れとともに改善した。「来年は絶対ならないように生活を改善するぞ」と決心。生活習慣に工夫をし、翌年はほぼ悩まされなかった。

冬季うつ病は女性に多く、男性の4倍ともいわれている。特徴は10月から3月頃の冬に起こる過食と過眠。菓子や炭水化物を過食する傾向がある。寝ても寝ても眠く、仕事を休むなど、日常生活に支障が出始めるなら、医師に相談しよう。

しかし軽い“ウインターブルー”なら皆さんにも思い当たらないだろうか。秋から冬になると家にこもりたい、甘いモノが止まらなくなる、気分が落ち込むなどという症状だ。ウインターブルーは、冬季うつ病に発展する可能性もある。そうなる前に予防しておきたい。

冬季うつ病やウインターブルーの原因は冬の短い日照時間が影響しているという。朝や日中の日光を浴びることが少なくなると、睡眠ホルモンが正常に分泌されなくなる。深い睡眠がとれなくなると体内時計が狂い、同時にセロトニンという脳内の物質が減り、気分の落ち込みを招く。つまり予防には、体内時計が正常に働くようにすることが最も大切。Aさんの職場は窓が無く、通勤は地下鉄だった。彼女は部屋の遮光カーテンを外し、朝日を浴び、昼休みは外に食事に出た。運動習慣がセロトニンを増やすと知り、テニスも始めた。

その冬、症状を抑えることに成功したAさんは、以前の自分を「雰囲気に流されやすい人」と表現した。例えば、外が寒いだけで憂鬱(ゆううつ)になった。その思考を直そうと「寒くても、私の心には熱い炎が燃えているぞ」と実際に温かい胸に手を当て、自分自身を励ました。

意識的にポジティブ思考にする訓練は、カウンセリングでも使われる手法で効果的。そしてAさん直伝の極めつきは“身近なプチ気分転換”だ。壁に元気になる言葉を張り、台所には青空のポスター。好きな音楽をスマホの中に入れておく。冬に限らず、プチ気分転換は、心の健康の強い味方になる。

西澤宗子
総合診療医。大村病院健診センター長。3人の男の子の母。『診察室からのぞいた子育て』(Kindle版)の著書がある。総合診療とは、「何科に行けばいいかわからない」症状について、“科”にかかわらず全体的に診断する仕事。