「おなかが張る」 会社員Aさん(45歳女性)

「先生、大した症状じゃないんですが、1カ月前から、時々おなかが張ってすっきりしないんです。便秘というわけじゃないのですが……」とAさんは腹をさすった。

おなかの張りを感じるのは、腸の調子が悪いときだけではない。排卵期や生理前の女性ホルモンの影響、子宮筋腫や卵巣嚢腫(のうしゅ)なども原因になる。胃炎や胆石もおなかの張りに影響する。だが、そんな内臓の病気やホルモンの影響がなくても、おなかの張りを感じさせる習慣がある。

1つめは呑気症(どんきしょう)。無意識に空気をたくさん飲み込んでしまい、げっぷやおならが出やすくなる。早食いや早口でしゃべる人に多い傾向がある。思い当たる人はゆっくり食べ、ゆっくり話す習慣を心がけよう。

2つめは、飲み物や食べ物の習慣。炭酸飲料のほか、糖質ゼロのアメやガムに入っている人工甘味料は、自然の糖分と比べ、消化がしにくく、腸内にガスが発生しやすい。ただ、Aさんはガスが増える飲食習慣はなかった。

3つめは、運動不足や姿勢の悪さ。体幹の動きは腸の蠕動(ぜんどう)運動を刺激する。運動不足や筋力不足は腸の動きを抑える原因になる。

Aさんは痩せた体形で猫背。診察中、ほとんど体は動かさない。前かがみで、首や肩も丸みを帯び、年齢にしては腰が曲がっていた。健康診断でとったレントゲンを見ると、Aさんの背骨が曲がっているのは明らか。猫背の場合、おなかの容積が小さくなり、少しのガスでもおなかの張りを感じやすくなるのだ。

姿勢が原因と気付いたAさんは姿勢に注意し、腹筋など筋力トレーニングを少しずつ始めた。背筋が伸びるだけで体幹の筋力アップになる。仕事の合間には、腰をねじったり背骨を上に引き上げたりするストレッチをすることでおなかの張りは解消される。

2カ月後、Aさんは元気な声で体調がよくなったと報告をしたあと、怒った口調で言った。「それより先生、中学生の娘もおなかの張りを前から訴えていたんですが、その原因がわかったんです。おなかに模様がつくほどの、ピッチピチの下着! 思春期だから体形を気にするのはわかるけど、あんなものを着けていたら、おなかが張るのも当たり前ですよ」

コルセットやきついジーンズの着用は、おなかの張りを感じやすくなる習慣の1つ。きつい洋服を着ているせいと気が付かず、不調を訴える女性は意外と多い。娘さんは、きっとそれが原因だろう。だけどAさん、娘さんには、優しく教えてあげて下さいね。

西澤宗子
総合診療医。大村病院健診センター長。3人の男の子の母。『診察室からのぞいた子育て』(Kindle版)の著書がある。総合診療とは、「何科に行けばいいかわからない」症状について、“科”にかかわらず全体的に診断する仕事。