現在のワクチンは予防効果なし

38℃以上の高熱や関節痛、倦怠感といった全身症状が強く現れるインフルエンザ。今回は新型のワクチンを開発中である、国立感染症研究所感染病理部・部長の長谷川秀樹先生に対策を伺った。

最も一般的なインフルエンザ対策はワクチン接種。しかしワクチンでは感染そのものは防げないという。

「現在の注射によるワクチンでは感染の予防はできません。抗体というウイルスに対抗する物質が血液中にだけでき、鼻や喉の粘膜にはできないのです。しかし現在のワクチンにはインフルエンザをきっかけに起こる肺炎などの重症化を防ぐ効果があります。重症化するのは乳幼児と高齢者が中心ですが、小学校低学年でも起こる可能性はあるので、ワクチンは受けておいたほうがいいです」

ではインフルエンザにはどんな予防方法が考えられるのだろうか。手のアルコール消毒には予防効果はあまりないという。

「インフルエンザは飛沫(ひまつ)感染なので、ウイルスを持っている人の咳(せき)やくしゃみで広がります。咳やくしゃみで半径1mくらいの範囲でウイルスが広がるといわれています。ですから感染者の半径1mほどには近寄らないという方法が考えられます。マスクは感染者が周りにしぶきを飛ばさないようにするのには役立ちます。ただ予防のための効果はあまり期待できません。ウイルスを含んだしぶきは飛び散るとかなり小さくなるので、市販のマスクでは通り抜けてしまうんです」

とはいえ、学校や通勤通学の電車やバスでは人ごみを避けることは難しい。家庭でできる予防法はないだろうか。睡眠と栄養を十分にとり、ストレスのない生活を心がけるなどして免疫力をつけておくことも1つの方法だ。またヨーグルトなどの乳酸菌で腸を整えることもいいという。

「腸内は粘膜でできています。腸の粘膜の免疫は全身の粘膜の免疫とつながっていますから、腸の環境を整えると鼻や喉の粘膜の免疫力が上がり、ウイルスの侵入を防げるのです。すぐに効果が出るものではありませんが、ヨーグルトなどの乳酸菌を毎日取り続けるというのは1つの方法です」

万一、かかった場合は、できるだけ早く医療機関へ。発熱後48時間以内に抗インフルエンザ薬を飲めば発熱期間が短くなり回復も早い。

「乳幼児や高齢者以外の健康な人にとってインフルエンザは怖い病気ではありません」

現在、長谷川先生は感染そのものを予防し、幅広い型のインフルエンザウイルスに効果がある経鼻噴霧型のワクチンを開発中。実用化には4~5年はかかるそうだが、痛みもないうえに、効果が大きいこの新型ワクチンの早期の実用化への期待は膨らむばかりだ。

インフルエンザの豆知識

最も流行する時期は、1月3週目、4週目、2月1週目。
関西や首都圏の中学入試期とぴったり重なる。なぜか毎年同じ時期に流行するのだが、その理由はわかっていない。

◆1年に最大3回かかる可能性がある。
毎年流行を起こすウイルスにはH1型、H3型、B型があり、すべてにかかる可能性も。

◆現在のワクチンの効果は2週間後から半年まで。
小学生なら2回接種が推奨されているので、11月中に2回目の接種が終わっているのが理想。

◆アメリカやヨーロッパでは経鼻噴霧型のワクチンが当たり前。
ただし生ワクチンなので、感染の可能性もある。長谷川先生が開発しているのは、感染の恐れがない不活化の経鼻噴霧型ワクチンだ。