仕事の専門分野でなくても、一流のビジネスマンになるために学んでおきたいことがある。
各界の第一人者たちが長く読み継がれる入門書を厳選してくれた。
KDDI総研リサーチフェロー 小林雅一氏

インターネットの発達により社会システムの大きな変革が起きている。『レイヤー化する世界』によれば、今後は先進国・周辺国といった区別が無意味になり、雇用や富が世界中に分散していく。そうした「レイヤー化」の主役はアップルやグーグル、アマゾンといった「超国籍企業」だ。

アップルはいまやiPhoneの競争力を武器に、製造業どころか流通、携帯キャリアなどさまざまな産業を支配する。その威力は絶大で、製造業では日本の「匠の技」をあっという間に呑み込み、海外へ移植することで日本企業の競争力を奪いつつあると『アップル帝国の正体』は暴く。ただ、そのアップルも絶対的なリーダーを失ったために、有能な人材や百出するアイデアをもてあましぎみの印象がある。一方、創業者が健在なグーグルやアマゾンはなお進化を続け、主役であり続けるだろう。

今後を考える際にカギとなるのはビッグデータとAI(人工知能)だ。インターネットの発達で日々蓄積されるビッグデータは、グーグルの音声検索、アップルのSiriといったAIをどんどん高度化させている。やがてはロボットのように人間に奉仕する家電製品や自動車が生まれ、社会そのものを大きく変えていく。拙著『クラウドからAIへ』で予想できる未来図を描いてみた。

IT――ビッグデータとAIが導く未来

■世界の変化にどう向き合うか

『レイヤー化する世界』
  佐々木俊尚/NHK出版新書

先進国への富の集中を促したのが過去2度にわたる産業革命。著者はいま進行中のインターネットの爆発的発達を第3の産業革命ととらえ、その結果「レイヤー」という水平的な世界構造への変革が進むと指摘する。アップルやグーグル、アマゾンなどの超国籍企業が提供する世界的な「場」がレイヤー化の基盤。われわれはこれとどう付き合うべきかを説く。

■ビッグデータを生かすには

『会社を変える分析の力』
  河本薫/講談社現代新書

ビッグデータが流行語になる中、データ分析の第一線で活躍してきた著者が実践的なデータ分析の哲学を披露。ITや数学、分析の方法論よりも、データ分析を企業の意思決定に役立ててほしいと説く。その一方、日本企業はデータ分析を駆使したトップダウン型ではなく、分析力を駆使することで現場力をさらに高めるような経営スタイルを目指すべきだと結論付ける。

■アップルのどこが凄いのか

『アップル帝国の正体』
  後藤直義・森川潤/文藝春秋

アップルはただのメーカーではなく、いまや世界の製造、流通、コンテンツ、通信などさまざまな産業を支配している。シャープやソニーといった日本企業はその一大経済圏に呑み込まれる道を自ら選び下請け化。その結果、生産能力のすべてを把握したアップルに生殺与奪の権を握られてしまった。販売業者なども同様にアップル支配下にある。その実情を描く。

■人工知能は日々成長している

『クラウドからAIへ』
  小林雅一/朝日新書

AI(人工知能)とは機械に人間のような知的能力を持たせる技術。1980年代の第一次ブームは失敗に終わったが、統計・確率的な手法の導入により復活。グーグルやアップルの音声操作、自動運転車が代表例で、日々発生するビッグデータが成長を促している。すべてを機械任せにすることへの反発もあるが、家電から自動車、農業に至るまで人間への恩恵は大きい。