2015年1月17日(土)

「がん難民」を救う! りんくう出島医療プロジェクトが始動

りんくう出島医療プロジェクト【1】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
中村 聡樹 なかむら・さとき
医療・介護ジャーナリスト

中村 聡樹

1960年、兵庫県生まれ。中央大学経済学部卒業後、行政専門誌記者を経てフリーに。90年代から介護・福祉関連の取材・執筆を精力的に行う。著書に『図解 介護保険のサービス内容・料金早わかりガイド』『ゼロからの介護』『年金でもできる海外ふたり暮らし』シリーズなど。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 中村聡樹=文 和田久士=撮影
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特区構想プロジェクトが具体化

国際医療交流の拠点づくり「りんくうタウン・泉佐野市域」地域活性化総合特区は、2011年12月に国の認定を受けたプロジェクトである。世界と結ばれる関西空港の目の前にある立地特性を活かし、国内外の人々が訪れ、交流する地域づくりを目指す。特区を起爆剤に、大阪・関西圏の活性化につなげ、日本の新成長戦略の実現に寄与するという壮大な計画である。

エックス線で透視し、正確に病変部にカテーテルを導くための画像装置。

その活動の柱となるのが、がん医療や獣医療など地域の医療資源を活かし、海外の医師との交流や医療機能の充実、海外の動物(ペット)の診療、医療や健康目的での観光訪日促進など、国際医療交流の拠点づくりを進めることである。

人工島に作られた関西国際空港から列車で一駅。長い橋のむこう側にひときわ背の高いビルの姿が見えてくる。りんくうゲートタワービルには、「ゲートタワーIGTクリニック」が入居している。

2002年に開業されたIGT(Image Guided Therapy)は、CTや血管造影などの画像をガイド役に、カテーテルという細い管を使って、身体を切らずに病気を治療するという意味が込められた名前のリニックだ。

なかでも「血管塞栓術」と呼ばれる治療法は、新しいがん治療法として注目されている。例えば、肝臓がんにおける血管内治療では、欧米で用いられている球状塞栓物質(SAP-MS)に抗癌剤(エピルビシンやアイエコール)を吸着させて肝動脈を塞栓する。つまり、がん細胞に栄養供給する血管を、抗がん剤が吸着した球状の物質で塞ぐことによってがんの進行を遅らせる治療法である。

このほか、同クリニックでは肝臓がんをはじめ、多くの種類のがん、血管奇形、子宮筋腫の治療に悩んでいる患者に新しい道を開いてきた。関西空港の対岸にあるという立地は、全国各地から多くの患者を集め(がん治療だけで年間1200件以上)ている。

同クリニックの院長、堀信一先生は、「ここでの治療ががん治療に悩まれている患者さんの方々に新しい道を開くと信じて活動してきました。専門の医師、看護師、放射線技師が高いレベルを保ち努力を続けています。すでに、国内でもっとも症例数の多い施設のひとつとして活動しています。末期の状態になってから診療を受ける患者さんもたくさんいらっしゃいますが、むしろ初期の段階で、治療を受けていただくことを希望しています。当クリニックは、あらゆる癌治療の方向性を考えていくことができるからです」と語っている。

現在、生涯にがんに罹患する確率は、男性54%、女性41%(国立がんセンターがん対策情報センター)、5年後の生存率は57.6%(全がん協加盟施設生存率協同調査)といわれている。がんの三大治療法(外科療法・抗がん剤療法・放射線治療)の効果が得られなかった場合、これ以上の治療は不可能と宣告されたら、多くのがん患者は行き場を失ってしまう。血管内治療に望みをかけて多くの人たちがICTクリニックを訪れる背景には、それだけ多くの「がん難民」が存在していることに他ならない。

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