少子高齢化にともなう社会保障費の負担増、そして消費税アップ、年金支給開始年齢の引き上げ、雇用不安……出るお金は増え、入るお金は減る一方。つぎつぎと迫る危機に、我々は貯蓄だけで防衛できるのだろうか。家計を守るひとつの方法として、保険との上手なつき合い方を探ってみよう。

年金制度そのものを否定する人は少ないだろう。現役時代に貯めた貯蓄だけで退職後の生活を維持することが難しいことは明白だからだ。

現在の公的年金制度は、現役世代が納める保険料で高齢者の年金をまかなう「世代間扶養」(賦課方式)に加え、基礎年金の半分は国庫負担(税金)でまかなう仕組みになっている。日本年金機構は世代間扶養の仕組みがあるからこそ、賃金や物価が上昇しても現役世代の給料が増えるため年金保険料の増収が図れ、高齢者の年金も改定でき、また自分が老後受け取る年金額も加入期間や支払った保険料に応じて決まる仕組みになっていると説明している。

とてもよく考えられた仕組みのように思えるが、ひとつ大きな欠点がある。年を追うごとに年金保険料を支払う現役世代が減少し、年金を受け取る高齢者が増え、現役世代の負担が重くなり続けるということである。

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図1 人口減少・少子高齢化が加速。生産人口は総人口の半分に!/図2 2050年には高齢者の4人に1人が「貧困」に

図1を見ていただきたい。2010年と50年の比較では、総人口は3098万人、15歳から64歳の生産人口は3173万人減少し、65歳以上の老年人口は820万人増える。生産人口は総人口の半分となり、10年には現役世代2.8人で1人の高齢者を支えていたものが、50年には1.3人で1人を支えることになる。これはかなりまずい状況なのではないか。

しかし国は「年金制度が破綻することはない」と言う。法政大学経済学部准教授の小黒一正氏は「極論になりますが、納めた保険料が1円でも年金として返ってくれば破綻していないということになる。そのことと年金で暮らせるということは別の話です」。

国は保険料の引き上げや財源の範囲内で給付水準を自動調整するマクロ経済スライドという仕組みを導入したことで、将来にわたって制度を持続できると胸を張る。しかし小黒氏は「年金改革によって導入したマクロ経済スライドがまったく発動されないので、実質的に年金給付をカットするメカニズムが働かず、年金財政を圧迫しています。しかしマクロ経済スライドが発動されて“順調”に給付額がカットされていくと、年金受給者の多くが厳しい状況に追い込まれます」。

図2を見ると一目瞭然だ。等価所得という年金などを含んだ所得が100万円未満の人を貧困と定義して高齢者全体に対する比率を算出すると、現時点では12%程度の人が貧困層と見られているが、30年後の40年には23%、60年には28%が貧困に転落する。しかし発動されなければそれぞれ16%、19%に抑えられる。その代わり年金財政は……。